「この株は売り? それとも買い?」「儲かる株はどっち?」まるで投資シミュレーションのようにクイズを解きながら「株で勝つ技術」を身につける画期的な1冊『株トレ――世界一楽しい「一問一答」株の教科書』が発売された。著者は、ファンドマネジャー歴25年、2000億円超を運用してTOPIXを大幅に上回る好実績をあげたスペシャリストの楽天証券・窪田真之氏。株で勝てる投資家はどのようにチャートを見ているのだろうか。窪田氏に質問してみると、「2つのポイント」を明かしてくれた。

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【ポイント1】「売買高の変化」を見る

──窪田さんの著書では、冒頭の1章で「売買高の変化」を取り上げています。売買高を取り上げた理由は何ですか?

窪田真之さん(以下、窪田):チャート分析でローソク足の動きだけを見る人がいますが、チャートを見る時には売買高を一緒に確認することが重要です。

 私は、よく戦国時代の合戦にたとえて話をします。売買高というのは戦場で戦っている兵の数です。両軍からたくさんの兵が出て戦っているのか、それとも、現状はまだ少ない兵の戦いで、本軍が後ろに控えているのか。

 投資家は勝つ軍につくことで利益が得られますから、戦況をきちんと捉えるために、まずは売買高と売買高の変化を確認する必要があるのです。

──売買高が少ない時は戦況が読みづらいということですね。

窪田:少数の兵の戦いで「買い手が有利」と判断して突撃したら、草むらからどっと伏兵が出てきて逆転されるかもしれませんよね。かといって、全軍が激突して勝ち負けが完全に決まった後でのこのこ出て行って勝ち方についても、褒美はもらえないでしょう。

 褒美というのは、投資で言えば利益のことです。早すぎればリスクがありますし、遅すぎれば利益が取れません。どっちが勝つかしっかり見極めて、絶妙のタイミングで参戦するために見ておかなければならないのが売買高です。そこに、チャートのモメンタム(相場の勢い)が出るのです。

【ポイント2】チャートをひっくり返す

──本書の中で、売買の判断をするために「チャートをひっくり返して見る」という話も出てきます。これも興味深いですね。

窪田:チャートは株価の変化を表すものですから、逆さにしたら上がりそうな株は下がりそうに見え、下がりそうな株は上がりそうに見えるはずですよね。つまり、絶好の買いチャンスと思って買う株は、逆さチャートで見た時には、絶好の売りチャンスとなるはずです。

 しかし、実際にはそうならないことがあります。チャート見て自信満々で買おうとしている株が、逆さチャートで見てみると「こんなところで空売りしたら踏み上げられそうで怖い」と見えることがあるのです。

──判断が矛盾していますね。どんな原因が考えられますか?

窪田:最も多いのは、先入観にとらわれているケースです。例えば「割安だから上がる」とか「成長テーマど真ん中だから上がる」とか、そういう思い込みが先にあって、その上でチャートを見ているということです。そうすると、目が曇ってしまい、上がることを示すシグナルにばかり目が向くようになり、売りのシグナルを見落とすこともあります。

 自分ではチャートを見て判断しているつもりで、実は「上がるはず」「いい企業」「買いが正解」といった先入観にとらわれていて、チャートをちゃんと見ていないのです。

──逆さチャートにすることで、買い手なら売り手、売り手なら買い手の目線で見ることもできますね。

窪田:そうですね。株の取引が成立するということは、買い手と売り手がいるということです。自分が買う時には必ず売る人がいますし、こちらに買いたい理由があるように、向こうには売りたい理由があります。そこを想像することが大事だと思います。

 孫子の言葉に「彼を知り己を知れば百戦殆からず」とあるように、ファンダメンタルズやテクニカルで自分なりに分析することも大事ですが、それだけではなく、相手の事情を想像することが、安易な高値掴みや安売りを防ぐことにつながると思います。

窪田真之(くぼた・まさゆき)
楽天証券経済研究所 所長兼チーフ・ストラテジスト。
大和住銀投信投資顧問などを経て、2014年より楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジスト。2015年より所長兼務。日本株ファンドマネジャー歴25年。年間100社を超える調査取材をこなし、公的年金・投資信託・NY上場ファンドなど20代で1000億円以上、40代で2000億円超の日本株運用を担当。ベンチマークである東証株価指数(TOPIX)を大幅に上回る運用実績をあげてきた。楽天証券では2014年から現在まで、同社投資メディア「トウシル」にて月曜日から木曜日まで「3分でわかる!今日の投資戦略」を連載。月間200万ページビューを超える人気コラムとなっている。主な著書に『株トレ 世界一楽しい「一問一答」株の教科書』(ダイヤモンド社)がある。