「投資の神様」「オマハの賢人」と呼ばれ、投資だけで個人資産10兆8000億円を築いたウォーレン・バフェットと彼の投資法については、これまでさまざまな解説がなされてきた。しかし、50年以上という長きにわたって投資の世界の最前線にいる者はバフェット以外見当たらない。なぜバフェットだけが勝ち続けられるのか。その謎を解く1冊の本がある。バフェット研究の第一人者ロバート・G・ハグストロームが、投資で成功するために必要な哲学と思考を解き明かした『バフェットのマネーマインド』(小野一郎訳)だ。日本版の刊行を記念して、内容の一部を公開しよう。

バフェット研究の第一人者が初めて知った「マネーマインド」とは?

1年に1回の大イベント
バークシャー・ハザウェイの年次株主総会

 2017年5月6日、ネブラスカ州オマハ。

 ウォーレン・バフェットの信奉者にとって、5月の最初の日曜日が意味するものはただ一つ、バークシャー・ハザウェイ社の年次株主総会だ。投資の世界でこれに匹敵するイベントはほかにない。

 バークシャー・ハザウェイ社の会長ウォーレン・バフェットと副会長チャーリー・マンガーは、途中に1時間のランチを挟んだだけの5時間ぶっ通しで、株主や多くの読者を代表する金融ジャーナリスト、証券アナリストたちからの質問に答えた。質問を事前にチェックすることなど一切なく、一つ一つの質問に二人は持ち前の率直さと温かみ、そしてウイットを利かせて丁寧に返答した。

 彼らの机の上にあるのは、水の入ったグラスとコーラ一缶、シーズキャンディのお菓子、そしてマイクロホンが二つだけ。ノートや説明資料を持たずに二人はにこやかに答え、アイデアを語った。3万人の聴衆が彼らに注目していた。私もその中にいた。

 早朝、私はホテルから車で株主総会の会場になっているオマハのダウンタウンにあるセンチュリーリンクセンターに向かった。駐車場はすでにほぼ満杯。2万人を収容する会場は株主でいっぱいで、あふれた数千人が周辺の大ホールに向かっていた。午前7時開場なのに、4時から長い待ち行列ができていた。会場に入ると、あちこちに配置された11本のマイクに人々が殺到した。運がよければ質問するチャンスがあるのだ。