かつては私も早い時間からそういう人々の列に並んだことがあった。だが、焦って階段を上り下りすることはずっと前にやめていた。マイクの近くの席を確保するために広い会場を走り回りエスカレーターを駆け上がるには年を取りすぎた。今はずっと気楽にやっている。
中に入ると、私はバークシャーが所有する事業の紹介ブースをぶらぶらと見て回る。まるでショッピングモールにいるようだ。シーズキャンディやデイリークイーンのスナック、アイスクリームやコーラを集めてもいいし、組み立て住宅やボート、RV車を見て回ってもいい。ベンジャミンムーアペイントの新色やカービーの最新の掃除機をチェックしたり、GEICOの保険を契約してもいい。
8時半くらいになると、私は2階に上がり、いつも座っているグランドボールルームBに入っていく。数千人の席が二つに分かれていて、それぞれに巨大なテレビ画面が用意されている。株主総会のライブ中継の前には伝統になっているバークシャー・ハザウェイの動画が上映される。バフェットとマンガーが株主の質問に答えるのは隣のアリーナだ。私は右後方の席に座り、リラックスする。
ここまではいつもと変わりがない。その日の総会で驚くことが起こる兆しは何もなかった。
質問のセッションはいつもと同じだ。バフェットとマンガーが座るメインテーブルの片方に三人のジャーナリストの席が設けられている。『フォーチュン』のキャロル・ルーミス、CNBCのベッキー・クイック、『ニューヨーク・タイムズ』のロス・ソーキンだ。彼らは読者や視聴者からの質問を紹介する。反対側は証券アナリストたちの席だ。ルエイン・カニフ・アンド・ゴールドファーブのジョナサン・ブラント、バークレイズのジェイ・ゲルブ、そしてモーニングスターのグレッグ・ウォーレンだ。マイクを配置した11ヵ所のステーションではやる気満々の株主たちが質問を練習している。
司会者はバフェットだ。ジャーナリストを一人指名し、アナリストを一人、そして聴衆から一人、順番に指名して、またジャーナリストに戻る。午前の部はいつもどおりに始まった。無人トラックについての質問があり、それによって鉄道や保険事業がリスクにさらされないかという質問があった。アメリカン・インターナショナル・グループとの再保険に関する質問、IBM、アップル、グーグル、アマゾンなどテクノロジー関連株に関する質問等々。バフェットは航空産業の競合性について質問を受け、コカ・コーラに対する考えやクラフト・ハインツとの競争が続いていることについても聞かれた。
バフェットの後継者は
どんな人物であるべきか?
午前の部が終わる頃に、9番目の質問者である株主からバフェットとマンガーの両者に対して28番目の質問が出た。「お二人はアイデアをキャッチボールして資本配分のミスを回避してきました。このやり方は今後のバークシャーでも長く続くのでしょうか?」。表面上は資本配分についての質問だったが、本当に聞きたいのは、将来の資本配分の意思決定を行うのは誰かということなのは明白だ。