「投資の神様」と称えられるウォーレン・バフェットの最新の考え方が理解できること、またバフェットが推薦したことで世界中の投資家のあいだで話題の『バフェット帝国の掟』の日本語版の出版を記念して、2014年以来、毎年バフェット率いるバークシャー・ハサウェイの株主総会に出席し、日本におけるバフェット研究者としても有名な、独立系運用アドバイザー尾藤峰男氏(びとうファイナンシャルサービス代表)に寄稿してもらった。連載5回目となる今回は、バフェットがコロナ禍でどのような投資行動をとったのか詳細に分析した。日本ではなかなか正確に伝わっていない、投資の神様のコロナ禍での「ミス」とは。

2019年株主総会展示会場で、傘下企業デイリークィーンのキャンディをかじるバフェット(撮影:尾藤峰男)

周りの人が貪欲な時に恐れ
周りの人が恐れ慄いているときに貪欲になれ

新型コロナウイルスの感染拡大が本格化した2020年3月の株式市場の動揺はまだ記憶に新しいだろう。ニューヨークダウは変動が激しくなり、1日で1000ドル安、2000ドル安となる日もあった。

そして3月23日には1万8591.83ドルと、ほんの1ヵ月余り前の2月12日の高値2万9551.42ドルから37%の急落となった。

この短期間での株価急落にはだれもが驚いたものだ。しかし、一方で「バフェットなら買いに動いているだろう」と想像した人は多いだろう。

コロナ禍におけるニューヨークダウの変動推移

バフェットの数ある名言の中で、もっとも有名な言葉がある。

「周りの人が貪欲な時に恐れ、周りの人が恐れ慄いているときに貪欲になれ」

またこういうことも言っている。

「10年に一度程度、経済の空全体に暗雲が立ち込めることがあるが、その時少しの間、金の雨を降らせる。我々はその時スプーンではなく、バケツを持っていく」

しかし、この時バフェットは実際にはほとんど何の投資もしていなかったのだ。このことは、5月2日に開催されたバークシャーの無人株主総会でバフェットの口から明らかになった。

大暴落の最中に航空株と
ゴールドマン株を大量売却

まずは、バフェットがコロナ感染拡大のなか、1月から6月にどう動いたかを追ってみよう。

2019年12月末現在
現金、トレジャリー・ビルなど現金同等物:1250億ドル保有

2020年1月~3月(第1四半期)
・自社株買い:17.4億ドル
・ゴールドマン・サックス株を約1000万株超売却、残り190万株
→株価が大幅に安くなる中で、バフェットはほとんど何もやらなかった。

第一四半期の3月にマーケットが急落する中、バフェットが行った投資は、わずかな自社株買いとリーマンショック時引き受けたワラント行使のゴールドマン・サックス株の売却だけ。

2020年3月末現在 現金、トレジャリー・ビルなど現金同等物 1370億ドル保有

2020年4月~6月(第2四半期)
・自社株買い 51億ドル→自社株買い拡大
・2016年に70~80億ドルで買い付けた4大航空株を、大幅な損で売却
(概ね40ドル台で買付、20ドル台から30ドル台前半で売却、アメリカン航空株は10ドル台前半)

第2四半期は、現金同等物が3ヵ月前から100億ドル以上増える中、4大航空株をほぼ買値の半値近い価格で売ってしまったのだ。これには、誰もが驚いたことだろう。皆内心、3月から4月にかけて、バフェットは何を買ったのか聞きたいと、待ち遠しい思いでいたことが想像できる。

米国4大航空株の株価推移