バフェットがまず答えた。

「取締役会が最も重要と考えるポイントは、バークシャーの後継者となる人間は資本配分の能力を持ち、それが証明されたものであるということです」

 営業や法務、製造などさまざまな分野から企業のCEOになることができるが、リーダーになったら、資本配分の意思決定を正しくできなくてはならないと言う。

「ほかの分野で多くの能力を持っていても、資本配分がうまくできない人がリーダーになったら、バークシャーの経営はうまくいかないでしょう」

 彼が次に言った言葉に、私の背筋はピンと伸びた。

 バフェットは続けた。

「私がお話ししたのはマネーマインドということです。知能指数が120や140の人がいても、得意分野はそれぞれ異なっています。ほかの人にはできないさまざまなことができるでしょう。しかし、どんなに賢くてもマネーマインドを持っていない人は、実にばかげた意思決定をすることがあります。資産配分という技は、針金を曲げて物をつくるのとは違います。多くの才能を持っている人が必要ですが、マネーマインドを持っていない人は求めていません」

 マネーマインド。これまでバフェットがそんな言葉を使うのを聞いたことはなかった。その瞬間に私は、これまで長くウォーレン・バフェットを研究してきたけれど、彼の半分しか理解していなかったと悟ったのだ。