日本企業の内部留保は海外で大幅増、賃上げ実現の打開策は「レパトリ減税」Photo:PIXTA

増えない日本企業の人件費
国内での利益成長が鈍い

 賃上げを優先課題とする岸田首相は、給与引き上げによる法人税の減免幅拡大など、さまざまな政策を打ち出している。昨年12月14日には国会で、「日本企業の経常利益は伸びているが賃金は伸びていない」という立憲民主党の落合貴之議員の説得に半ば応じるような格好で、株主還元を抑制するため企業の自社株買いに「何らかのガイドライン」のような制限を課す可能性に言及。発言が伝わると、株価が大きく下落する場面もあった。

 岸田首相は、日本企業の経常利益が伸びる一方で、賃金が伸びない状況を問題視しているが、これは事実だ。2004年度に45兆円だった日本企業の経常利益は、2020年度には63兆円と大きく伸びたが、同期間に日本企業が支払った人件費は、170兆円のままで横ばいにとどまっている。

 しかし、人件費が伸びないのは、日本国内における利益成長が鈍いのと整合的だ。財務省の法人企業統計によると、2004年度に44兆円だった日本企業の営業利益は、2020年度に42兆円へとむしろ減少している。法人企業統計は、有価証券報告書のような連結ベースではなく単体ベースであるため、営業利益の減少は国内における利益減少を意味している。