
山崎 慧
2021年12月の金融政策決定会合では、新型コロナ対応金融支援特別オペの大部分を占める民間債務担保分を2022年3月に終了させるとともに、社債の保有残高もコロナ前の水準に戻す方針が発表された。日銀のマネタリーベースは、2021年12月時点で670兆円だが、そのうち60兆円を占めるコロナオペの民間債務担保分は、2022年3月に期限切れとなり、徐々に減少していく。日銀の金融緩和縮小と日本株市場との関係を歴史的に整理し、今後の日本株市場や物価動向の先行きを展望する。

岸田首相は、賃上げを優先課題とするが、決め手に欠けるのも事実だ。日本企業での賃上げが進まない理由を国内外の利益成長の違いから指摘するとともに、海外でため込まれた内部留保を国内に還流させるための「レパトリ減税」の有効性を紹介する。

岸田首相は、就任会見にて賃上げ減税の実施に前向きな姿勢を見せた。賃上げ減税の構造的な限界や、コロナ禍での日本の雇用調整プロセスを振り返り、導入機運が高まる賃上げ減税が現実の賃上げにつながらない理由を解き明かす。

菅首相は9月3日、自民党の総裁選に出馬せず、任期満了とともに首相を辞任する考えを示した。これにより、9月29日に実施される総裁選の勝者が、次期首相となる見込みだ。日本株市場は、菅首相の退陣報道を受けて上げ幅を広げ、東証株価指数(TOPIX)は2015ポイント超えと、1991年以来30年ぶりの高値となった。次期首相候補とされる岸田文雄氏や高市早苗氏が打ち出す政策を整理するとともに、自民党総裁選の展開から予想される株式市場の反応を大胆に予想する。

日本では新型コロナウイルスの感染再拡大を受け、行動制限が徐々に強められている。こうした行動制限の再強化によって懸念されるのが景気の失速だ。「自粛ムード」による景気失速でダメージを受ける人々が生まれることを忘れてはならない。「自粛ムード」によるダメージを和らげる有効な経済対策のあり方を考える。

米大統領選挙は、バイデン候補の優勢が伝えられている。郵便投票の開票が本格化すると、バイデン候補はそれまでトランプ大統領が大きくリードしていた諸州で急激に追い上げ、ついに逆転を果たした。共和党の過半数の可能性が濃厚と伝えられていた上院でも、民主党は終盤になって猛烈に追い上げており、上院・下院とも民主党が支配できるかの攻防となっている。米株式市場は安定した動きを続けているが、今後は下落リスクに注意が必要だ。バイデン候補や民主党幹部らが過去に表明した景気対策の内容から、バイデン・民主党政権となった場合の米国株の下落リスクを考察する。

日本では、新型コロナウイルス新規感染者数が7月以降に再度加速したが、死者の増加は他国に比べて緩やかだ。その一方で、経済の落ち込みは深刻だ。日本経済の回復ペースは7月以降も鈍い。今後懸念されるのは、経済を起因とした死亡者の増加だ。仮に、失業率がリーマンショック時とほぼ同じ5%に上昇した場合、自殺者は失業率が2.4%だった場合と比べ、毎年1万人ほど増える計算になる。菅政権に求められる新型コロナウイルス対策のあり方を考える。

アベノミクスは「大胆な金融政策」「機動的な財政出動」「民間投資を喚起する成長戦略」の3本の矢からなる経済政策だ。このうち、金融政策が最も効果を発揮した。しかし一方で、アベノミクスには企業利益の拡大が賃上げにつながらなかったという誤算や、雇用増加の質に関する疑問もある。また安倍首相は最後まで「アベノミクス最大の謎」を明かさずに辞任の意向を示した。安倍首相在任中のアベノミクスを総括的に検証する。

新型コロナ禍による各国での行動制限の程度は、国・地域によって異なる。グーグルの「モビリティ指数」やアップルの「モビリティトレンド」などの公表データを基に各国を比べると、日本の自粛は独自の行動制限で経済の大きな落ち込みを防いでいるスウェーデン並みで、すでに人の移動も平常に戻りつつあるという。背景には大規模な財政・金融政策の恩恵がある。日本景気の「V字回復」の素地は整ったのか。

新型肺炎は世界中で感染拡大に歯止めがかからない。各国で商業施設の営業停止や外出禁止令、渡航制限が発令され、新型コロナ感染の抑え込みと引き換えに経済活動を停止させている。日本、中国、ユーロ圏、米国は、いずれも今年1-3月期に大幅マイナス成長となるのが確実だ。そんな中、他国と比べて、日本には金融・財政共に対応余地が残っていると見られる。

中国で発生した新型肺炎は日々感染の広がりを見せており、経済活動に急ブレーキがかかっている。金融機関やシンクタンクの多くは、1-3月期の中国の成長率予想を前年比+6%程度から前年比+4%程度に下方修正しているが、コンセンサス予想を超える低迷となる可能性もある。中国の経済活動が急減速することは、日本にも大きな影響を及ぼす。新型肺炎は日中両国経済にどのような影響を与えるのか。

政府は消費の大幅な落ち込みを防ぐため、軽減税率の導入、幼児教育の無償化などの景気対策を開始した。しかし消費増税後の消費関連指標は非常に弱く、消費税率引き上げ前の駆け込み需要がなかったにもかかわらず、反動減はしっかり出ている。今回も2014年時と同じ轍を踏むことになるのか。政府は景気下支えのため、事業規模26兆円の補正予算を閣議決定したが、日本景気は持ち直すか。

就職氷河期に社会に出たロスジェネは、非正規雇用・低賃金の待遇が現在も続いている。働き方改革や育児支援などの制度上の恩恵から取り残され、年功序列の変革も議論され始めた。ロスジェネの経済状況が是正されなければ、ロスジェネから生まれた子どもたちには、奨学金などを通じた貧困の連鎖が起きる恐れもある。ロスジェネ支援策は、さらなる充実が求められる。

欧州委員会は、過剰財政赤字を理由としたイタリアへの制裁を見送ったが、今夏から秋にかけて再燃のリスクは高い。欧州の債務問題が終わらないのは、単一経済圏における財政、金融、為替の調整が十分に機能しないのが大きな原因だ。財政共通化に向けた動きが頓挫するなか、イタリアで話題になっているミニBOT構想は、問題収束に向けたヒントになりうる。

安倍首相は、財政健全化と全世代型社会保障の実現のため、消費税の税率を今年10月に引き上げる意向を表明している。しかし、日本の現役世代の負担は、徐々に限界に近づいている。増加する社会保障関係費の多くを占める年金給付費について、本質的な課題を考えよう。

安倍首相は自身の経済政策の成果として、雇用の増加を繰り返し誇っている。しかし、今年の春闘でのベースアップは、政府からの再三の賃上げ要請にもかかわらず前年比+0.6%にとどまるなど、賃金の伸びは今もなお限定的だ。賃金の伸びを妨げるものとは何か。

昨今、経済論壇でMMTが話題を呼んでいる。MMTとは、自国通貨の発行権を持つ国では自国通貨建てで国家債務のデフォルトが起こらず、政府は無限に信用を供与できるという主張だ。実は、我々の足元でも「日本版MMT」と呼べる状況が起きている。

各国中銀によるハト派ドミノの中では、緩和余地の少ない日本は不利な状況に立たされている。日本の景気減速が鮮明になりつつある中で、日銀は厳しいかじ取りを迫られる。
