習慣化していく上で大切なキーワードが「統合化」全体のバランスがしっかりと取れている状態であり、統合性のある人生とは、自分の中で調律が整っていることだ。一朝一夕では手にできず、自分への深い理解と探究の結果、身につけることができる生活習慣リズムだ。内省と行動を繰り返し、試行錯誤しながら自ら作っていかなければいけない。
習慣化のプロとしてこれまで5万人を指導し、1000人以上をコーチングしてきた古川武士氏が、行き着いた最も効果的な習慣は「書く」ことだった。必要なのはノートとペンのみ。自分と向き合い、本当に大切なことに気づけば、生き方は今よりずっとシンプルになる。自分を整理するための「書くメソッド」を体系化した書籍『書く瞑想』から、一部を抜粋して特別公開する。

村上春樹が365日続けている「統合性のあるシンプルな生活」とは?Photo: Adobe Stock

統合性のあるシンプルな人生とは?

 私が、習慣化において大切にしているキーワードの1つに「統合性」があります。

 統合性とは、全体のバランスが高度な次元で融合している状態です。

 統合性がある人生というのは、自分の中でまさに調律が整っています。

 たとえば、朝5時に起きたとします。この行動だけを見れば、起きられれば合格・満足という感じですが、同時に昼に眠くて集中力が極端に下がってしまうなどの弊害があります。

 また、家族との生活リズムが変わってしまって、夫婦の会話の時間がなくなり、仲が悪くなることも考えられます。

 夜ふかしをなくすことで、夜の自由や刺激を感じることができなくなり、日々の豊かさが下がっていく人もいます。

 このように、生活習慣は自分の思考や感情から、周りの人との関係まで連動している有機体のような側面があります。いい生活習慣のリズムというのは全体が好循環で回るという統合性がある状態です。

 統合性のある生活といえば、小説家の村上春樹さんのスケジュールを思い出します。

 彼の生活は、毎朝早く起き、午前中5~6時間ひたすら執筆。一気に集中したら執筆をやめて、昼食をとったら、午後は趣味で日課のジョギングをするそうです(*1)

 創作活動には精神力が必要で、そのための肉体的強靭さこそ創作のエネルギーになると、ジョギングが大切な日課だそう。そして夜は、音楽を聴いたり本を読んだりしてリラックスしたら、翌日に備えて早く就寝するそうです。

村上春樹が365日続けている「統合性のあるシンプルな生活」とは?「村上春樹さんの1日のスケジュール」
出典:NOMAD CREATOR「小説家の1日のスケジュール|世界で有名な作家5人の生活とは?」

 こんな生活をほぼ365日ずっと繰り返すことで、長編小説を書いているといいます。

 シンプルなものには深い探求があります。これまで創作意欲のアップダウンもあったでしょうし、書きすぎてリズムを崩したこともあったでしょう。

 長い作家生活の中で試行錯誤を続けた結果、このルーティンに落ち着いたといいます。

 もちろん、ここまで規則的にやる必要はありません。普通はできないでしょう。朝型がいいとか夜型がいいとかなどは人それぞれ違います。

 自分が大切にしたい基準や家族・仕事のスケジュールに合わせて、一番統合性の取れた習慣のリズムをつくっていくのがいいと思います。

 答えは1つではないのです。大切なことは、生活の中で実際に実験してみること、試行錯誤を繰り返すことで、自分なりの充実した生活リズムを見つけていくことです。

*1『職業としての小説家』村上春樹、スイッチパブリッシング、2015

(本原稿は『書く瞑想──1日15分、紙に書き出すと頭と心が整理される』からの抜粋です)