国家安保の危機でも
南北関連行事に出席した文大統領

 文大統領は南北関係改善のため、韓国最北端の南北鉄道協力事業の現場を訪れる直前に今回の北朝鮮によるミサイル発射を知った。しかし、文大統領は予定通り行事に出席し、「我々はこのような状況を根源的に克服するために対話の糸口を手放してはならない」と述べ、挑発に対する批判・糾弾は行わなかった。

 北朝鮮の極超音速ミサイルの発射は国家安保の危機である。そうした中で国家の命運を握る大統領が、身の安全を損ないかねないヘリコプターに乗り込み、現場に向かうなど通常では考えられないことである。本来であれば、文大統領はソウルに残り、危機対応で指揮を執るべきである。

 文大統領がこのような姿勢であるから、軍当局も今回発射したミサイルが極超音速ミサイルであるとは認めたくないのだろう。

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 北朝鮮が核ミサイルを放棄する意思があると信じている者は文政権関係者以外にいないだろう。中ロも北朝鮮を擁護しているが、北朝鮮の意図についてはより客観的に分析していると思われる。

 文政権がこのような姿勢を取り続ける限り、韓国は東アジアの問題だけでなく朝鮮半島問題についてさえ「運転席」に座ることはできない。韓国は既に日米から相手にされていないばかりでなく、国際社会から相手にされていないことを真剣に懸念すべきであろう。

(文在寅氏の北朝鮮への過度な傾斜、韓国の安全保障を脅かす北朝鮮との交渉姿勢については拙書「さまよえる韓国人」を参照願いたい)

(元駐韓国特命全権大使 武藤正敏)