新日本酒紀行「南郷」奥州最南端の矢祭町で1833年に創業 Photo by Yohko Yamamoto

大好きな酒の酒蔵を継いで蔵元に!新蔵にカフェもオープン

 大好きな酒を飲み続けるうちに酒蔵と縁がつながって、蔵を継いで蔵元になった男がいる。それが矢澤酒造店の矢澤真裕さんだ。日本酒の伝統や、地酒と郷土料理の相性に引かれ、全国行脚も。多種多様な酒を飲む中、ある居酒屋で藤井酒造店の「南郷」と出合う。昔風の酒だが、後口が良くて料理がうまくなる。他の酒を飲んでも、結局この酒に戻った。店のおかみが「そんなに好きなら」と人を介し、8代目の藤井健一郎さんを紹介。「辛口でうま味は強いのに、次の瞬間、スッと味が消えるのが凄い」と思いを伝えると、「よくぞこの酒を理解してくれた」と感激される。そして「あなたは酒造りをするべきだ」と。実は藤井さん、後継者に悩んでおり、矢澤さんに運命を感じたのだ。宿命的な出会いに矢澤さんもすぐに心を決め、半年という早さで事業承継を行った。藤井さんから「蔵名も変えるべきだ」と言われ、商号も変更し、2016年に矢澤酒造店で再出発。