岸田文雄首相に壮大なブーメランが返ってきた。菅義偉前首相のコロナ対応を批判して宰相の座に着いたが、今度は自らがコロナ感染拡大「第6波」の到来で窮地に立たされつつある。3回目のワクチン接種が後手後手に回る中、菅前政権でワクチン供給にも尽力した政府関係者は憤りを隠さない。(イトモス研究所所長 小倉健一)
コロナ感染「第6波」到来で
高まる岸田首相への不安の声
2022年も新型コロナウイルスとの「お付き合い」が続くのは間違いなさそうである。感染が急拡大した沖縄、広島、山口の3県に「まん延防止等重点措置」が適用され、「成人の日」を前に新年のお祝いムードは霧消した。
東京都や大阪府など大都市圏でも新規感染者が急増し、早くも医療現場や学校関係者からは悲鳴が上がる。感染拡大「第6波」への備えは十分だったのか。「感染爆発前夜」に見える今、決断らしい決断を下さない岸田文雄首相の対応を不安視する声は広がりつつある。
「3月以降は今般、追加確保したモデルナ(製ワクチン)1800万人分を活用して、一般分についても前倒しいたします」
岸田首相は1月11日、高齢者へのワクチン接種前倒しや自衛隊による大規模接種センター設置などを発表し、「オミクロン株は若年層や子どもへの感染が多く見られる。12歳以上の若い方で、まだワクチン接種をしていない人はぜひ接種をお願いしたい」と呼びかけた。
昨年の秋以降、日本国内のコロナ感染者数は落ち着きを見せてきた。これは、菅義偉政権時代にワクチン接種が驚異的なスピードで進んだことが奏功したといえる。昨年末の時点で総人口の73.8%が2回接種を完了し、今や65歳以上の接種率は9割を超える。米国や英国、ドイツなどを上回る接種状況となった。
だが、昨年10月の岸田政権発足に伴ってコロナ対策は緩慢になったとの指摘は少なくない。新政権で11月19日に閣議決定された経済対策は、足元の感染者数減を前提に緩やかな対策へとかじを切り、観光刺激策「Go Toトラベル」キャンペーンの早期再開を模索するなど、社会経済活動との両立を急いできた。
政権発足後100日間は「ハネムーン期間」といわれるが、世界で変異株「オミクロン」が拡大する中で飛行機の国際線の新規予約停止を航空会社に要請したものの、わずか3日で撤回するなど指揮命令系統の混乱も目立つ。
就任100日目を迎えた岸田首相は1月11日、「目まぐるしく変わる国内外の情勢に機動的に対応しながら、スピード感を持って山積する課題に一つ一つ決断を下し、対応してきた」と自賛した。だが、菅前政権でワクチン供給にも尽力した政府関係者は憤りを隠さない。