「パクリ屋」という言葉をご存じだろうか。取引を持ち掛け、商品を先に受け取り、支払いを延ばし、そのまま連絡を絶つ、「取り込み詐欺会社」のことだ。このパクリ屋の被害が後を絶たない。パクリ屋の最新動向を紹介しつつ、これから年度末にかけて積極的に動きだすパクリ屋の「だましの手口」、被害に巻き込まれないための「対策」を解説しよう。(帝国データバンク横浜支店情報部長 内藤 修)
23社から8000万円を詐取した七里物産、
「古典的な手口」でもだまされる
警視庁は今年1月13日までに、神奈川県藤沢市の食品卸会社「七里(しちり)物産」社長らを詐欺容疑で逮捕した。同社は昨年7月末に事業を停止し、破産準備に入っていたが、その前から審査・与信管理担当者の間で「取り込み詐欺会社」、いわゆる「パクリ屋」の疑いが持たれていた会社だった。
「ぜひ取引を始めたい」
同社は自社ホームページ上(現在は閲覧不能)に「微力ながら全国各地の生産者と消費者の潤滑剤になるべく努力してまいります」などとうたい、「湘南・鎌倉に根ざす食料品商社」を標榜。昨春から事業を本格稼働させ、各地の食肉卸会社や水産会社に、メールや電話で取引を持ち掛けていた。
「初回納品分は現金で払う。2回目以降は掛け取引で」
素性の分からない会社からの営業攻勢に、当初から戸惑う会社が少なくなかった。ある水産会社は不審に感じ、あえて「相場よりも1.5倍高い見積もり」を出したところ、「その価格でいいので売ってほしい」との返事があったという。食品業界を中心に警戒感が高まるなか、わずか半年ほどで案の定、倒産という幕引きとなった。
そんな古典的な手口に引っかかる会社があるのか――。読者の皆さんはそう思うかもしれないが、各種報道によれば、被害は16都道府県の23社で計8000万円に上るという。本稿では七里物産の事例等をもとに、これから年度末にかけて積極的に動きだすパクリ屋の「だましの手口」、被害に巻き込まれないための「対策」について解説する。