「三種の神器」で取引相手をだます
昔も今も変わらないパクリ屋の行動パターン

 取引を持ち掛け、商品を先に受け取り、支払いを延ばし、そのままドロン(=連絡を絶つ)――。人気マンガ『ナニワ金融道』で描かれた以前から、パクリ屋の行動パターンは、昔も今も変わらない。

年度末は「パクリ屋」が横行!詐欺会社の“三種の神器”にだまされない方法とは七里物産の本社事務所玄関

 こうした手口を繰り返すやからを指して、審査・与信管理業界では古くから、パクリ屋を表す3つの“隠語”が使われてきた。具体的には「P企業」「業態不鮮明企業」「取り込み詐欺企業」の3つ。筆者は20年以上この業界に身を置いているが、3つの隠語を聞かない日はない。それぐらい、雨後のたけのこのように、新たなパクリ屋が誕生している。

 彼らには、取引相手をだますための“三種の神器”がある。「休眠会社」「決算書」「ホームページ」の3つだ。今回紹介する七里物産も、まさにこの3つを持つ会社だった。同社の商業登記上の設立は2015年10月。だが、実際には昨春に活動を始めたばかりで、この前後に代表取締役をはじめ、役員が変更している。おそらく、「休眠会社」を手に入れ、活動のための「ハコ」にしたものとみられる。取引相手を安心させるため、一定の業歴のある会社を使うのは彼らの常とう手段だ。

 取引を持ち掛ける方法は、電話やFAXに加え、最近はメールが多い。地理的に遠く離れた会社に「御社のホームページを見た」とささやき、自社の会社案内とピカピカの内容の「決算書」を送付。相手への信頼度を上げつつ、サンプル品の送付や新規取引を持ち掛ける。

 こうした打診を受けたとき、担当者がまず確認するのは、その会社の「ホームページ」だろう。彼らもそんなことは百も承知で、多数のイメージ写真を使い、好印象を与えるホームページを準備している。七里物産のホームページもまさにそうで、ご丁寧に「従業員数」や「取引銀行名」まで記載があった。ホームページは今や、「きちんとした会社に見えるから、大丈夫だろう」と思わせるための舞台装置の一つとなっている。

パクリ屋にだまされない方法
ネットや調査会社から情報収集を

 パクリ屋被害に巻き込まれないためには、取引開始前の「事前確認」が重要となる。まずはその会社の商業登記を取り寄せ、「役員」「住所」「商号」「事業目的」「資本金」に変更がないか確認する(本店住所変更前の「閉鎖登記簿」があれば取得する)。彼らは前述したとおり、休眠会社を使って活動することがほとんどのため、見かけ上の業歴や資本金、事業内容にだまされないよう注意したい。