インターネット情報も必ずチェックしておく。代表者名や役員名で検索すると、過去の“前歴”が共有されていることが少なくない。もちろんうのみにはできないが、もう一歩踏み込んで確認するきっかけにはなる。現地のオフィスにも足を運びたい。遠方の会社の場合は難しいものの、事務所の場所や雰囲気、応対する相手(代表や社員)の様子から“伝わってくるもの”は多い。都内には「パクリ屋御用達」の雑居ビルも存在するらしい。

年度末は「パクリ屋」が横行!詐欺会社の“三種の神器”にだまされない方法とは七里物産が入居していたビル

 主業と大きく異なる事業を新たに始めているケース、あまりに幅広い商品を扱っているケースも要注意だ。支払い面では「前金から掛け払いに切り替わるタイミング」に、特に警戒したい。少額の現金取引を数カ月行い、取引実績を作った上で、取引量を増やして取り込むのが常套手段だからだ。

 手前みそながら、「信用調査会社の活用」は最も実践的な対策の一つといえる。帝国データバンクの調査員には、120年以上前の創業時から「詐欺師から善良な商人を守る」という信念が受け継がれている。「餅は餅屋」とはよく言ったもので、パクリ屋情報はリアルタイムで調査会社に集まってくるものだ。

コロナ禍は「パクリ屋天国」?
特に年度末は要注意

 最後に「最新動向」をお伝えする。最近は警察が取り締まりを強化しているため、パクリ屋が逮捕されるケースも少しずつ増えてきたが、それでもまだ「野放し」に近い状態といえよう。

 ここで1社、ある会社の事例を紹介する。全国的に食品や家電製品など、多岐にわたる商品を取り込んだ末に倒産したパクリ屋(七里物産とは別の会社)があったが、なんとその会社の代表は、倒産した翌週、別の場所に新たに法人を設立している。おそらく今後はその会社を使って、同じことを繰り返すのだろう。この会社ほど極端ではないにせよ、「何度も繰り返す」のが彼らの流儀のようだ。

 パクリ屋と結託する弁護士も存在する――。やや刺激的なことを書いたが、筆者自身は倒産記者として、こういうケースをこれまで何度も見てきた。いわゆる「パクリ屋御用達」の弁護士が存在するのだ。

 当の弁護士はもちろん否定している。だが、会社の倒産処理を受任しながら実際には手続きを進めず、債権者の追及が弱まった頃合いを見計らって、担当弁護士を辞任するというのがお決まりのパターン。おそらくパクリ屋と示し合わせて、債権者の責任追及を逃れる手助けをしている可能性が高いとみられる。

 対面での営業が制限されるコロナ禍は、だます側にとって「パクリ屋天国」ともいえる絶好の環境である。これから年度末にかけては例年、パクリ屋が活発に取り込む時期に差し掛かる。コロナ禍が長引けば長引くほど、取り込み詐欺の被害がさらに広がらないか非常に危惧している。