フィクションとはいえ、現実を下敷きにしたドラマでこれはアリなのか?という印象を持った。後に引用する通り、「大筋は事実だろう」「真実を伝えてくれる内容でよかった」と評価する視聴者も多く見られることから、中にはこれが望月記者のスクープだったと誤解する人もいるのではないか。

 ただ、このようなストーリーを作るのであれば、もっとも配慮されるべき雅子さん、相澤記者への丁寧な説明は当然あるのだろうと考えていた。そうでなかったとすれば、作品を高評価した人への裏切り行為にもなるのではないか。

 念のためことわっておくと、筆者は森友裁判の「認諾」についてまったく納得がいかないし、さらなる真相解明が進められるべきだと思う人間である。

 今、世の中ではこの作品をどう評価している人が多いのだろうか。

ネット上では
高評価レビューが多いが…

 ここからは、ネトフリ版「新聞記者」が国内外でこの1カ月あまりでどう評価されたのかを見ていきたいが、その前にまず映画版とドラマ版の内容を簡単に紹介したい(以下、未見のため内容を知りたくないという方はご注意を)。

 映画版「新聞記者」は、望月衣塑子記者の同名本を原案とし、望月記者がモデルと思われる主人公を、韓国人女優のシム・ウンギョンが演じる。ストーリーの核となるのは、内閣府が進める新設大学に関する疑惑である。さらに、もう一人の主人公とも言える存在が松坂桃李演じる若手エリート官僚だ。疑惑を追及する記者の正義感と、裏で行われている不正を目の当たりにする官僚の苦悩が対比的に描かれる。

 一方、ネトフリ版「新聞記者」は6話構成となっている。主演の記者を演じるのは米倉涼子。若手官僚役は綾野剛。赤木さんをモデルにしたであろう、内閣府資料の改ざんに関わった職員(吉岡秀隆)の自死を中心に、その妻(寺島しのぶ)やおい(横浜流星)の慟哭(どうこく)や、その後の報道や支援により徐々に希望を取り戻す姿が描かれる。

 映画版もネトフリ版も、現実のニュースを下敷きにしたであろう場面がいくつもあるが、一方で若手官僚や職員のおい、記者の兄など実際には存在しない人物を登場させ、それぞれのキャラクターの内面を見せるのはフィクションならではだ。

 ネトフリ版のネット上のレビューでは、「面白くてイッキ見」「森友問題かよ興味ねーと思って見始めたけどだいぶ面白かった」「すごく深い作品」など、高評価がかなり多い。

 また、「あくまでフィクションとして見るべき作品だが、大筋は事実だろう」「ドラマの中だけは、忖度(そんたく)しないで真実を伝えてくれる内容でよかった」「仮名手本森友学園問題」「ほぼノンフィクションであることが恐ろしい」といった感想からは、現実を題材にした社会派作品であるからこそ評価する声が多いことがうかがえる。

 それでは、絶賛以外の評にはどんなものがあるだろうか。