志賀見聞録 自動車産業の半世紀とミライ1999年にカルロス・ゴーン氏が策定した「日産リバイバルプラン(NRP)」と現行の再建計画「Re:Nissan」が似通っているとの指摘は多い。NRPで最優先されたこととは? Photo:REUTERS/AFLO

現在日産自動車が進める再建策「Re:Nissan」に、かつてカルロス・ゴーンが主導した「日産リバイバルプラン(NRP)」の影を見る者は多い。連載『志賀見聞録 自動車産業の半世紀とミライ』の第3回【過去編3】では、日産の自力再建を阻んだ「二つの元凶」に焦点を当て、当時の教訓がなぜ現代に生かされなかったのかを考察してみたい。日産が「真の復活」を遂げるために不可欠な、「最後の1ピース」とは何なのか。(日産自動車元COO〈最高執行責任者〉 志賀俊之)

>>【過去編1】「ゴーンさんが羽田空港で逮捕されたらしいです(2018年11月19日)」から読む
>>【過去編2】ルノーの軍門に降った日(1999年3月27日)から読む

「米国で大きな損失が出そうだ」
ジャカルタ帰任後に明かされた“不穏な兆し”

 歴史は繰り返すのか――。

 2月12日に発表された日産自動車の2026年3月期第3四半期決算で、通期の最終損益が6500億円の赤字に転落する見通しとなった。前期の6709億円の最終赤字に続き、これで二期連続の赤字決算となる。いまなお社員の皆さんが、過去に積み上がった日産の「負の遺産」に苦しみ続けている現実が、改めて浮き彫りになった。この「負の遺産」に関わった役員OBとして申し訳なく思っている。

 現在、日産が取り組んでいる再建プラン「Re:Nissan」と、かつてカルロス・ゴーンが主導した「日産リバイバルプラン(NRP。1999年10月18日に発表)」が似通っているとの指摘は多い。

 しかし、それは驚くことではない。90年代の経営危機と現在の苦境を生み出した背景には、多くの共通点があるからだ。すなわち、生産能力の過剰、人員の過剰、高い原価だ。病巣が同じであれば、その処方箋が似通るのは当然といえる。

 そこで、現在の危機を乗り越えるための“生きた参考事例”として、私が90年代に身をもって経験した「二つのエピソード」を紹介したい。

「現地に確認中なのではっきりしないが、米国で大きな損失が出そうだ」

 97年、私がジャカルタから帰任して間もないころのことだ。海外部門の部長との酒席で、耳を疑うような話を聞いた。