「豊田綱領」には、
佐吉と喜一郎の思いが入っている

磯谷 喜一郎さんのまわりには、いろいろとアドバイスする人がいてね。その部下たちは、トヨタグループの、いまの経営層の先輩になったね。喜一郎さんは、組織作りも行い、佐吉さんの偉業を永続性のある完璧な形にした。そして自動車を創業した。私は、喜一郎さんはものすごく偉いと思うよ。

稲田 私は、佐吉さん、喜一郎さんのお二人からから引き継がれた文化を、大野さんを筆頭とする諸先輩方が、見事に形にして、組織に根付かせた点に敬服します。

磯谷 喜一郎さんは、心の部分にあたるものとして「豊田綱領」をつくられたが、佐吉さんの志を受け継いだうえで、喜一郎さんの気持ちも入ってると思う。喜一郎さんは、従業員は家族だ、協力会社は分工場であると言っているからね。

稲田 その心を、従業員だけでなく協力会社まで分かち合う姿勢ですね。

磯谷 うん。かつて、資金不足になったときに、一萬田日銀総裁から人員整理をしなければ金を貸さないと言われた。それで人員を整理して、喜一郎さんは自分も辞めた。そういうことから、トヨタグループは人員整理をしない。そういう事態になった際には、まず社長から辞める覚悟をせよとなっている。

 また、佐吉さん、喜一郎さんだけではなく、今回の話の中心の大野耐一さん。そして豊田英二さん、豊田章一郎さん、私の上司にあたる豊田芳年さんたちの心遣いは、従業員の幸せを願っていろいろなことをやられていて、本当に素晴らしいと思うよ。

稲田 佐吉さん、喜一郎さんからの考え方は、脈々とトヨタグループに流れているのですね。

つづく