時代や環境変化の荒波を乗り越え、永続する強い会社を築くためには、どうすればいいのか? 会社を良くするのも、ダメにするのも、それは経営トップのあり方にかかっている――。
前著『戦略参謀の仕事』で経営トップへの登竜門として参謀役になることを説いた事業再生請負人が、初めて経営トップに向けて書いた骨太の経営論『経営トップの仕事』がダイヤモンド社から発売。好評につき発売6日で大増刷が決定! 日本経済新聞の書評欄(3月27日付)でも紹介され大反響! 本連載では、同書の中から抜粋して、そのエッセンスをわかりやすくお届けします。好評連載のバックナンバーこちらからどうぞ。

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CSについて、どこまで効果があるのかを
定量的に調査してわかったこと

 1996年に百貨店のノードストロムの取締役だったベッツイー・サンダースが書いた『サービスが伝説になる時』(ダイヤモンド社)が出版され、CS(顧客満足)について日本でも大きく取り上げられました。

 確かに、「お客様にご満足いただくことが重要である」ことは、働くものの姿勢としてはとても重要です。そのため、精神論として朝の朝礼などで確認し合い、現場でお客様と接する際には、常に肝に銘じておくべきことであるのは間違いありません。

 ところが、このCSについては、具体的に何を狙い、どこまで行うべきかについてはあいまいなままで、マネジャーによっても線引きするラインが異なる、気合いの掛け声になっているものです。

 このCSについては、どこまでが本当に効果があるのかを定量的に調査した結果があります。

 たとえば、店舗に来店された場合、お子さんにおもちゃを上げ、とにかく親切を徹底したりしても、それによってお客様の再来店率が大きく上がることはなく、店舗として、本来やるべきことができていない時に、再来店率が下がるということがわかっています。

 ノードストロムなどの接客型の百貨店の売り場では、販売員に個人売上の10%を超えるインセンティブ給与が販売実績に応じた歩率(ぶりつ)で支払われる報酬制度をとっています。

 ノードストロムは、仕入れた商品の売り場での編集スキルが高いのが特徴で、高めの商品の価格設定から、上顧客に対して、要望に応じて商品をしっかりと提案するアシスト型の接客を行います。

 この上顧客たちは、心地良ければ、何百万円レベルの買い物を平気でしますので、そこにつく販売員の手にするインセンティブ報酬を10%と考えても、かなりの金額になります。

 伝説と言われたノードストロムの販売員が、来店した顧客が「車のタイヤの調子が悪い」と言った時に、ショッピング中にタイヤを無料で交換したという逸話があります。

 これは販売員が、単に自分がもらっているインセンティブ報酬の中から自腹でその費用を払い、次回来店時に、その上得意顧客から自分を指名してもらおうとした、経済性という意味でも理にかなった行動なのです。

 確かに、アラブ諸国から自家用機で買い物に来るような顧客に対しては、感動を体感する機会を提供するのが当たり前という社内の文化があるのでしょう。

 しかし、私も何度かノードストロムは訪れて買い物をしたことがありますが、一般人が、欲しいものを1、2点見つけて買う程度のショッピングでは、この驚くような経験をする機会はまずありません。

 CSで本当に注力すべきは、顧客を喜ばせる、プラスに作用するアイデアを考える前に、顧客を幻滅させるマイナスに作用する事項をことごとく撲滅することです。