時代や環境変化の荒波を乗り越え、永続する強い会社を築くためには、どうすればいいのか? 会社を良くするのも、ダメにするのも、それは経営トップのあり方にかかっている――。
前著『戦略参謀の仕事』で経営トップへの登竜門として参謀役になることを説いた事業再生請負人が、初めて経営トップに向けて書いた骨太の経営論『経営トップの仕事』がダイヤモンド社から発売。好評につき発売6日で大増刷が決定! 日本経済新聞の書評欄(3月27日付)でも紹介され大反響! 本連載では、同書の中から抜粋して、そのエッセンスをわかりやすくお届けします。好評連載のバックナンバーはこちらからどうぞ。

トヨタはなぜ、「製造現場への産業用ロボット導入」に安易に飛びつかなかったのか?Photo: Adobe Stock

最新の産業用ロボットの生産ラインを導入して、
稼働率が大幅に低下

「経営はいともたやすくバズワードにまみれる」

 この二つ目の事例は、80年代に某自動車メーカーが産業用ロボットを溶接ラインへ導入しようとした際の話です。

 当時は、FMS(Flexible Manufacturing System、フレキシブル生産システム)、FA(Factory Automation、ファクトリーオートメーション)など、今で言うITの、生産現場への適用が唱えられていました。

「製造現場への産業用ロボット導入」が提唱された時期であり、メカニクスとエレクトロニクスをつなげた造語のメカトロニクスという概念が生まれ、「日経メカトロニクス」というビジネス誌も創刊されました。当時20代の私も「これからの工場はこのような形になっていくのか」と未来のモノづくりの姿を夢想したものでした。

 未来の工場ということで、この工場では、日本で初めて自動車ボディの板金溶接ロボットの大量導入を行い、先端事例として様々なメディアで華々しく紹介され、脚光をあびました。

 またここでは、外資系コンサルティング会社からの「技術者にも競わせるべき」とのアドバイスを(真に)受けて、モデルチェンジの度にまったく新しいアイデアのラインを生産現場につくり、工場ごとにまったく異なる考え方の車づくりが行われる状態が続いていました。