良いROIC経営のポイント2
計算式を開示し、セグメントごとの目標値を示しているか
日立は自社のROICを以下の数式に基づいて算出し、6つの事業セグメント(IT、エネルギー、インダストリー、モビリティ、ライフ、オートモーティブシステム)における過去2年度実績値と次年度(2021年中期経営計画最終年度)の目標値を開示している。
図表2に示す通り、日立は2022年3月期の売上高、調整後営業利益(率)、ROICの見通し値を一覧で開示している。この表における調整後営業利益は税引前ベースの数値であり、ROICは税引後ベースであるため、税金の調整は必要となるものの、売上高の目標値から逆算して、投下資本のターゲット額もおおよそ推定することは可能である。
5つのセクターはそれぞれ売上高1~2兆円超におよぶ巨大なものなので、実際にはさらに細分化されたビジネスユニット(利益責任単位)でのROICの算出と評価が日立内で行われていると推察される。
「ROICの導入をスタート」と声高に叫びながら、その計算式も目標値も算出単位もその後の推移も一切開示しない企業も散見される。もしその理由が、大企業であることや、事業が多数に及ぶこと、あるいは企業秘密に相当するといった理由であるなら、それらはもはや見当違いの回答かもしれない。
日立ほどの大企業で、日立ほど複雑に事業範囲やグローバルに拠点が広がる製造業は日本ではほぼ存在しない。もちろん、日立にも企業秘密は存在する。ブラックボックスになりがちだったROIC経営に対して、その透明度を高めたという点においても、日立のROIC経営のスタートと開示姿勢は見習うべきポイントが数多く存在していよう。