思い付きと企画は違う
考え抜いた若手だけに「好き勝手」を認める

 立場が上がった土屋Pは、もちろん部下を細かく管理してはいないが、時には、若手が提案してきた企画の可否を判断しなければならない場面もある。

 その際、見込みのある若手には、かつての自身のように「好き勝手やらせておけ」とGOサインを出すものの、必ずしも全員の企画を通すとは限らないという。一体どんな基準を設けているのか。

「企画を選ぶとき、判断基準にするものは目の色だけです。『こんなにやりたいんだ』っていうね。そういう若手は、プレゼンを聞いた後に『ここはどうするんだ』と掘り下げた質問をしても、泣きながらでも必ず返してきます」

「思い付きと企画は違う。『面白そう』というだけで企画書を作るのは単なる思い付き。企画とは『面白そうだけれど、こうなったらできないな。でもこうすればできるかな』と100回も1000回も(試行錯誤を)やることです。そこまで考えている人だけが掘り下げた質問に答えられるのです」

 かくいう土屋Pも、最初から全てが許されていたわけではない。失敗を重ねて番組作りから外され、辛酸をなめる中で思考力を磨いたからこそ、番組作り復帰のチャンスを生かすことに成功し、電波少年という前例のない番組を作ることができたのだろう。

 だからこそ立場が変わった今も、考え抜く力を持つ後輩を見抜き、信頼して仕事を任せているのだ。

 こうした土屋Pの経験や仕事術は、冒頭で述べた“怒れる管理職”が、部下との接し方を変える上で参考になる。

 対談で聞き手を務めた経営学者・入山章栄氏は、組織全体の発想力を高めるためのマネジメント方法を次のように解説している。

「稟議書を何階層も通すなど、特定の意思決定の仕組みしか持たない組織ではイノベーションは起きません。特定の人に自由にやらせるのも手です。部下がお伺いを立てずに結果を出すと、結局、上の人たちは『俺がサポートしていた』と言いだすのですから。(管理職は)上に聞かずとも自由に行動できる若手を育てていくべきでしょう」

 ダイヤモンド・オンラインの対談動画(全5回)では、本稿で触れていないポイントも含め、土屋Pによる「猿岩石の飛行機使用発覚をチャンスに変えた方法」「日本のドキュメントバラエティーが世界で通用する理由」などを詳しく紹介している。

 土屋Pの型破りな仕事術を知り、ビジネスに生かしたい読者には、ぜひスキルアップや学びに活用していただきたい。