国際子ども図書館国際子ども図書館 Photo by Kenichi Tsuboi

東京・上野にある「国際子ども図書館」をご存じだろうか。訪れる人はそれほど多くないが、滞在は快適で無料。1階のカフェテリアはメニューが充実しているので、近隣の美術館・博物館を巡りがてら訪問するのがお勧めだ。明治の近代洋風建築を安藤忠雄などの設計で完全に復元した建物も見ものだが、今なら「帝国図書館」時代に興隆した児童書とその作家、編集者を取り上げた素晴らしい展示会も楽しめる(文中敬称略)。 (コラムニスト 坪井賢一)

大人が楽しめる「子どもの本の夜明け」展

 東京・上野にある国際子ども図書館の3階「本のミュージアム」で、「子どもの本の夜明け~帝国図書館展」が開催されている(6月23日まで)。国際子ども図書館は、国立国会図書館に属する図書館として2000年に開館した。明治の近代洋風建築である「レンガ棟」は、帝国図書館として建設され、戦後は国会図書館分館(上野図書館)として使用されてきた。その後、安藤忠雄建築研究所などの設計で完全に復元され、さらに、中庭を挟んで「アーチ棟」を新設した。

 帝国図書館の時代まで歴史を振り返ると、その開館は1906(明治39)年。予算の積み上げがうまくいかずに建築費を削減され、当初計画の3分の1くらいの規模に縮小されてしまったそうだが、それでも威風堂々たる鉄筋レンガ造りのクラシックなデザインで、明治・大正期の利用者の学習や知的創造力を大いに刺激した。多くの作家、編集者、記者、翻訳家、詩人、学者が訪れている。レンガ棟として完全に復元された建物は、ルネサンス様式、つまり古典古代のギリシャを思わせる堂々とした美しいデザインを伝えている。

 今回の「子どもの本の夜明け」展では、帝国図書館のヘビーユーザーだった夏目漱石からはじまり、芥川龍之介、樋口一葉、幸田露伴などの児童文学に関する著書や写真、パネルが並ぶ。尾崎紅葉や田山花袋といった、児童書とは無縁だと思っていた作家の著書も展示されていて驚いた。エンターテインメントでは、『怪人二十面相』などの江戸川乱歩や押川春浪が並ぶ。そして、児童文学で重要な鈴木三重吉(1882~1936)と宮沢賢治(1896~1933)が続く。