駄菓子がたどる運命は二つ
うまい棒の値上げは「合理的」

 さて、近年、駄菓子屋さんで10円で買えたお菓子がどんどん消えていくという現象が起きています。2017年に荒川区の梅の花本舗の「梅ジャム」が、創業者の高齢のために廃業して買えなくなったというのが印象的な例です(タカミ製菓が販売する梅ジャムは現在でも購入できます)。

 駄菓子がたどる運命は、大きく分けると二通りあります。

 町工場で昔ながらの規模で製造を続けていて、創業者が高齢化し設備が老朽化するとともに消えていくというのが一つの流れ。

 もうひとつは、コンビニを販路にするなどで売り上げが拡大し、工場にも設備投資をして、それでもなお子どもが買える価格を維持している駄菓子です。

 その観点で、後者の代表格であるうまい棒を販売するやおきんの年商は163億円(2019年)と、ちょっとびっくりする企業規模です。チロルチョコの親会社の松尾製菓も年商75億円(2020年)、10円ではないですが70円のガリガリ君の赤城乳業は466億円(2020年)と、もう大企業と言っていいぐらいの規模にまで成長しています。

 私がガリガリ君を思い出すときには、どうしても70円に値上げをした際の赤城乳業の謝罪CMが頭をよぎります。経営陣が苦虫をかみつぶしたような無念の表情で「値上げ」を伝えて謝罪する。そのような企業努力で子どもの財布に合致した価格の商品を提供し続けているのが、これらの菓子メーカーです。

 その視点で捉えると、今回のうまい棒の値上げは、現在のマクロ経済環境を考えると経営陣にとっては無念であり、かつどうしようもないことだったでしょう。

 なにしろ、うまい棒の原材料であるトウモロコシも食用油も、国際商品相場は高騰しています。パッケージに使われるプラスチックフィルムも原油高で値上がりしているし、完成した商品を全国に届けるためのガソリン代だって高止まりしている。経済評論家の目で見ればどう考えても、価格維持では持続的な経営は不可能な経済環境です。

 うまい棒が2円の値上げをしたのは、非常に合理的な経営判断だったのではないでしょうか。なにしろ12円であれば子どもの財布はそれほど傷まない。私が子ども時代にチロルチョコの値段が20円に引き上げられるという衝撃を受けたのとは、ショックの度合いが違います。

 一方で、わずか2円であっても比率でいえば一気に価格が20%上がっている。ということは、目の前にある原材料や包装材、輸送コストなどあらゆる値上げを吸収できる可能性があります。

 今年に入ってのさまざまな食品の値上げラッシュの幅を見ると、小麦粉、食用油、マヨネーズなどさまざまな食材で3%~9%ぐらいの値上げが発表されていますが、うまい棒はそれよりも大きな幅に設定している。これは言い換えると、大手食品メーカーが小刻みに何度も値上げをしているのと比較して、うまい棒の値上げは長期計画が立てやすい値上げ幅ということになるわけです。