約束手形写真はイメージです Photo:PIXTA

昨年2月、経済産業省が2026年をめどに紙の約束手形を廃止する方針であることが報じられ話題となった。若い世代の人は「手形」と聞いてもピンとこないだろう。しかし、日本の商取引において手形は長く定着し、欠かせない支払い手段となってきた。紙の手形が廃止となる背景にはさまざまな要因がある。例えば社会全体が電子化に向かう中での発行手続きに関する手間のほか、印紙代、郵送費などのコスト、さらに防犯(盗難・偽造)、防災面などでのリスクだ。一方で手形の電子化が進められ、2009年から電子手形の運用が始まっているが、近年その利用企業数はほとんど増加していないのが現状だ。今回は消えゆく紙の手形の利用状況や手形に関するエピソードなどについて紹介したい。(帝国データバンク情報統括部 阿部成伸)

手形の流通は
15年間で73%減

 まず、手形に関するデータを紹介したい。全国銀行協会による全国の手形交換高(決済に利用され、取り立てに回された紙の手形枚数)などの推移を見ると、2006年の手形交換高枚数は1億3423万5000枚、交換高金額は477兆9275億200万円、取引停止処分数は6393件だった。