絶好調の東京エレクトロンが半導体不況に備えて注力する秘策Photo:123RF

昨年から続く深刻な半導体不足の影響がさまざまな企業に及ぶ中、当連載ではシリコンウエハーメーカー大手のSUMCO、半導体メーカーのルネサスエレクトロニクスといった企業の動向を取り上げてきた。今回は、日本企業が強みを持つ「半導体製造装置」の領域をリードする東京エレクトロンに焦点を当てる。目下、東京エレクトロンの業績は好調だが、これまでの業績がずっと順風満帆だったわけではない。東京エレクトロンのビジネス構造上の弱点とは何か。またそれを補う秘策とは。決算書から読み解いてみよう。(中京大学国際学部・同大学院経営学研究科教授 矢部謙介)

半導体不足で好業績を上げる
東京エレクトロンの決算書

 今回は、半導体製造装置メーカーである東京エレクトロンの決算書を取り上げたい。

 東京エレクトロンは、1963年にVTR(ビデオテープレコーダー)やカーラジオなどの電子機器の輸出入を行う商社として設立された(設立当時の社名は東京エレクトロン研究所)。実は、設立当初の東京エレクトロンは東京放送(現TBSホールディングス)の関係会社だった。21年3月末時点においてもTBSホールディングスは東京エレクトロン株の3.83%を保有する大株主である。

 その後、東京エレクトロンは半導体製造装置事業に進出し、20年現在では米アプライドマテリアルズ、蘭ASML、米ラムリサーチに次ぐ世界第4位の半導体製造装置メーカーとして知られている(米VLSIリサーチ調べ)。

 空前の半導体不足で半導体製造装置の販売も好調が続いており、そのような状況下で好業績を上げている東京エレクトロンだが、過去には半導体市況に業績を大きく左右されてきた。

 そんな中、東京エレクトロンは市況に左右されにくい企業体質を確立するために、「ある事業」の強化を図ってきた。その事業とは何か。東京エレクトロンの決算書と過去の業績推移を読み解きながら、東京エレクトロンの戦略を探っていきたい。