昨年から続く深刻な半導体不足の影響がさまざまな企業、業界に及んでいる。そうした中で注目しておきたいのが、半導体関連メーカーの動向だ。前回のSUMCOに続き、今回は半導体メーカーのルネサスエレクトロニクスについて決算書を読み解いてみよう。もともと赤字体質だった同社は現在、「稼げる会社」へと生まれ変わった。何が変わったのか。そして現在の課題とは。(中京大学国際学部・同大学院経営学研究科教授 矢部謙介)
稼げる体質へと変貌を遂げた
ルネサスエレクトロニクス
今回は、半導体メーカーのルネサスエレクトロニクス(以下、ルネサス)の決算書を読み解いていこう。ルネサスは、2003年に日立製作所と三菱電機の半導体事業を分社化、統合して設立されたルネサステクノロジを前身とし、その後10年にNECの半導体部門であるNECエレクトロニクスと合併することで生まれた日本の半導体メーカーである。
日本メーカーの半導体シェアが下がり続ける中で生まれたルネサスの業績は当初より厳しいものだったが、ルネサスはM&Aを含めた事業構造改革を行うことで、半導体メーカーとして稼げる体質の会社へと変貌を遂げてきた。
ルネサスが行ってきた事業構造改革の歩みを振り返りながら、ルネサスがどのようにして稼げる会社になってきたのか、そして今ルネサスが抱えるリスクとは何か、決算書から読み解いていくことにしよう。
下図は、12年3月期と20年12月期におけるルネサスの損益計算書(P/L)を比較したものだ(ルネサスは16年より12月期決算に移行しており、18年12月期よりIFRS〔国際財務報告基準〕を適用している)。
これによると、売上高(売上収益)は12年3月期には約8830億円だったものが、20年12月期には約7160億円に減少している。その一方で、営業損益は12年3月期には約570億円の赤字だったところから、20年12月期には約690億円の黒字となっている。売上高は減少したものの、利益を稼げる会社になってきていることが読み取れる。
ここからは、発足してから2期目に当たる12年3月期のルネサスにおける赤字の理由を振り返るとともに、その後の事業構造改革の歩みをたどってみよう。