台湾TSMCを巻き込む「日の丸半導体復活」構想が、日本の衰退を早める理由TSMC創業者のMorris Chang氏 Photo:SOPA Images/gettyimages

気合入りまくり!政治主導で日本の半導体復活…!?

 「日本はこんなもんじゃない。『ジャパン・アズ・ナンバー・ワン・アゲイン』を目指して先陣を切っていきたい」

 先月21日、自民党の「半導体戦略推進議員連盟」設立総会で、甘利明会長は気を吐いた。

 今や半導体は世界で奪い合う「戦略物資」となっており、「半導体を制するものが世界を制する」という言葉さえあるほどだが、「日の丸半導体」はひいき目で見ても、世界を制する兆しは見えない。

 白物家電と同じく80年代には世界市場シェア50%を占めていたが、韓国や台湾に次々と追い抜かれ、今や2021年第1四半期の売上高ランキングにおいても、日本企業は15位にキオクシアが入るのみ。全体的に存在感が薄いのだ。

 そこで、「経済安全保障」の重要性を強く主張している甘利氏がトップとなって、米中経済戦争の中で「1人負け」しないよう、政治主導で半導体産業を強くしておこうというわけだ。

 その気合の入りっぷりは、「ポスト菅」のチョイスに影響力アリアリの安倍晋三元首相と麻生太郎副総理兼財務大臣が最高顧問として名を連ねていることからもうかがえよう。

 アメリカでも韓国でも台湾でも、そして中国でも半導体ビジネスの支援は今や「国策」となっている。そのような意味では、ぜひとも頑張っていただきたいところなのだが、正直あまり期待はできないのではないかと思っている。

 甘利氏のかけ声は勇ましいが、その一方で経済産業省(経産省)は「ジャパン・アズ・ナンバー・ワン・アゲイン」や「経済安全保障」という方向性とは、真逆の半導体産業支援政策を進めているからだ。

 それは端的にいうと、「台湾の半導体大手・TSMCと連携して日の丸半導体復活」という構想、いや「官僚の妄想」とも言っていい青写真である。