日本原子力発電の敦賀原発2号機直下の破砕帯(断層)について、原子力規制委員会が「活断層の可能性が高い」との見解を示した。原電側は「科学的根拠の十分な説明がされていない」と抵抗を試みるが、「クロ判定」は覆りそうになく、廃炉の可能性が高い。債務超過も予想される中、関係者があわただしい動きを見せ始めた。

「まさか、本当に今日やってしまうとは……」

原子力規制委員会と日本原子力発電の駆け引きはしばらく続きそうだ
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 12月10日、原子力規制委員会が「活断層の可能性が高い」との見解を示した一報に触れ、経済産業省幹部は驚きの声を漏らした。

 これまでの調査の経緯から、規制委が日本原子力発電敦賀原子力発電所の真下を活断層が通っているとの疑念を強めているのは周知の事実だったが、原電側が2013年1月までに追加調査を終える予定だったため、「見解を示すのは年明け以降」(電力会社幹部)とみる声が根強かった。

 そもそも敦賀原発2号機直下の断層に疑義が生じたのは今年4月。東京電力福島第1原発の事故を受けて原子力安全・保安院が全国で新たな調査を指示する中、敦賀原発は現地調査が行われ、「地震時にずれる可能性がある」と指摘されていた。

 この断層以外にも、関西電力大飯原発や北陸電力志賀原発など五つの原発で規制委による調査が進むが、原子炉近くに別の活断層が通っていることもあり、業界では「敦賀原発が一番危ない」とされてきた。それだけに原電側も独自の追加調査を通して安全性を強調していたが、12年9月に発足したばかりの独立新組織である規制委は素早く一定の結論を導き出すことにこだわったようだ。

 原電側は12月11日、「科学的に理解に苦しむ」と規制委に見解の再考を求める異例の公開質問状を提出し不満を噴出させた。活断層の認定基準が変更された経緯もあって「国策で誕生した会社にもかかわらず、結局国に翻弄させられた」(幹部)と恨み節も聞こえる。

 しかし、規制委には廃炉を命じる法的権限はなく、廃炉の判断は原電に委ねられる。このため原電が判断を不服として行政訴訟に乗り出す可能性もある。ドイツでは、政府の脱原発政策で損失を被ったとして、電力会社が国を訴えた事例がある。

 ただ、こうした原電側の対応は「先延ばし」(経産省幹部)の側面が強い。というのも、廃炉が決まれば原電の経営が窮地に陥ることは確実で、「破綻」までもが現実味を帯びてしまうからだ。