全国2700社が導入し、話題沸騰のマネジメント法「識学(しきがく)」の代表・安藤広大氏の最新刊『数値化の鬼』。「仕事ができる人」に共通することは、「数字で考えること」や「数値化のクセをつけること」だと言う。数字によって自分の不足を客観的に受け入れ、次の行動設定や行動変容につなげることによって、人は「急成長」する。「数字で人を見るな」「数字がすべてではない」ということはよく言われるが、「数字」は決して無視できない存在。この本では、「感情を横に置いて、いったん数字で考える」「一瞬だけ心を鬼にして数値化する」など、頭を切り替える思考法を紹介する。
「数字のない競技」なんてない
「数字は大事です」という話をビジネスの場ですると、こんな反論をされます。
「数値化によって『自分らしさ』が失われるのではないですか?」
あなたも、そのように思うかもしれません。ただ、1つだけ大きな誤解があります。
ここでは、スポーツを例にとるとわかりやすいと思います。
数字がないと、ほとんどのスポーツ競技は成立しません。
サッカーや野球、バスケットボールは、「点数」が入ります。
一見、数値化ができなそうなアーティスティックスイミングやフィギュアスケートも、審査員が付ける「点数」で競います。
今の一流のアスリートを思い浮かべてください。
彼らは、自分から「こう見られたい」という自分らしさを出しているわけではなく、数字を追った結果、振り返ると個性が滲み出ているのです。
自分らしさを優先させると
全体の「質」が落ちる
数字があった上で、それを超える「自分らしさ」「やりがい」「達成感」などの自己満足を感じるアーティストもいることでしょう。
「優勝しました。けれど、私らしい競技ができなかったので満足していません」
などと、ストイックに語る選手がいますよね。
ただ、数字がないところでの競い合いは、成立しません。
「さあ、みなさん、自分らしい競技を自由にしてください」という状況になったら、どんなことが起こるでしょう。
1人1人のパフォーマンスや全体の質は確実に落ちます。見る側の人も、何を基準に応援すればいいかわかりません。
ビジネスもこれと同じ構造です。
売上や利益など数字が関係しないビジネスなんてありません。その達成こそが第一です。社会問題の解決を目指す社会起業でも、利益を生まないと継続はできません。
数字を追いかけ、ふと振り返ったときに初めて「あなたの強みは○○ですね」と、自分らしい個性が出るのです。その順番を間違えないでください。
数字はとことん
「客観的」にしてくれる
また、数字の「プレッシャー」についても、よく質問されます。
「数字のことを考えさせないほうが、のびのびと働けるのでは?」
という意見です。これも大きな勘違いです。
不適切な数字の目標を掲げ、「なんでこんなこともできないんだ!」と怒鳴ったりするからプレッシャーになるのです。
つまり、「感情」を絡めることが問題なのであって、数字そのものがプレッシャーを与えるわけではありません。
数字に置き換えると
「心」がラクになる
数値化は、感情を横に置いてラクにしてくれるツールでもあります。
たとえば、好き嫌いの悩みも同じことが言えます。
職場にどうしても嫌いな人がいるとしましょう。
「あの人は苦手だ」とつねに思っていると、疲れてしまいます。
しかし、「ムカつくことを『3回』言われた」と数値化してみてください。
やや引いて考えることができると思います。
「去年は『10回』嫌みを言われたけど、今年はまだ『2回』だな」
と考えることもできます。
「嫌い」という主観が、「回数」という客観的事実に置き換わります。
すると、一歩引いて自分を見ることができ、スーッと生きやすくなるでしょう。
それくらい、数字は発明なのです。
モヤモヤする気持ちから、あなた自身を引き離してくれます。
感情ではなく、理論で冷静に判断するためのツールなのです。
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモを経て、ジェイコムホールディングス株式会社(現:ライク株式会社)のジェイコム株式会社で取締役営業副本部長等を歴任。2013年、「識学」という考え方に出合い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場を果たす。2022年3月現在で、約2700社以上の導入実績があり、注目を集めている。最新刊『数値化の鬼』(ダイヤモンド社)の他に、29万部を突破したベストセラー『リーダーの仮面』(ダイヤモンド社)などがある。