実質所得の推移を見ると図2のようになる(実質所得はWorld Inequality Databaseのデータから計算した。計算方法は図2の注を参照)。

 1995年から2019年にかけての所得の成長倍率を見ると、全国民の1人当たり実質国民所得は1.389倍になったが、うち上位1%は1.810倍、上位10%は1.581倍、上位10%-50%は1.278倍、下位50%は1.216倍となっている。すなわち、下位の人の所得もそれなりに上昇しているが、上位の人の所得はそれよりも大きく上昇しているということだ。

格差をめぐる意外な事実
日本の所得は?

 一方、日本について所得階級ごとのシェアの推移を見ると、図3のようになる。

 図3に見るように、日本の上位1%、上位10%の所得シェアは1992年まで低下している。これは80年代末の株と土地バブルの崩壊によるためであるだろう。おそらくピークの90年、ボトムの92年からの動きだけに着目すべきではないと考えて、経済が一応落ち着きを取り戻した95年を起点に考えることにする。

 上位1%の所得シェアは、95年には10.6%であったが、2019年には13.1%へ、上位10%では38.3%が44.9%へと上昇した。これに対し、下位50%の所得シェアは18.4%から16.8%に低下している。日本では、上位の所得シェアの上昇も下位の所得シェアの低下もアメリカと比べてマイルドである。ただし、日本の上位10%の所得シェアの上昇はアメリカ以上で、現在のシェアはアメリカとほとんど同じである。