金融庁が設定をゆるめた途端に、本数が増加

 実は、つみたてNISAがスタートする前、日本証券アナリスト協会が2017年4月にセミナーを開催した時のこと。

 森信親金融庁長官(当時)は講演で、つみたてNISAの対象になりうる投資信託について、「アクティブ型株式投資信託で5本、インデックス型株式投資信託で50本弱」と述べました。つみたてNISAの対象としてふさわしいと思われる投資信託の本数は、当時6000本以上あった投資信託の中でたったそれだけだったのです。

 それが、なぜ指定インデックス投資信託の本数が50本弱から173本にまで増えたのでしょうか。それは、金融庁がつみたてNISAの対象となる投資信託の選定基準をゆるめたからです。

 実際のところ金融庁としても当初、まさかつみたてNISAの対象となりうる資産作りに適した投資信託の本数が、ここまで少ないとは思ってもみなかったようです。

 しかも、その事前調査で、大手証券会社の系列の投資信託会社が運用している投資信託が、ほとんど入ってこなかったことにも驚愕したのでしょう。

 そこで、インデックス型に関しては、一定の条件を満たしてさえいれば、過去の実績が全くない「新しく作った投資信託」を認めることにしたのです。

 それを受けて、各投資信託会社はインデックスファンドを中心に、つみたてNISA用の投資信託を次々に新規設定しました。その結果の173本なのです。

 ちなみにアクティブ型の投資信託に関しては、運用が開始されてから5年以上が経過していること、信託期間中3分の2以上で資金流入超であることなど、私が『最新版 投資信託はこの9本から選びなさい』でも述べていたような条件が基準だったことから、その本数は21本に留まっています。

 おそらく、今後もインデックス型投資信託を中心にして、つみたてNISA用の投資信託はどんどん増えていくのだと思います。何となくつみたてNISAの最初の志が歪められた感もあるのですが、一度ゆるめた基準を、また厳しくするのはなかなか難しいことだと思いますから、このまま本数が増えていくのは必定でしょう。

 問題は、つみたてNISAを始めてみたいという個人の間で、「何を選べばいいのか分からない」という声が高まっていることです。これはiDeCo(個人型確定拠出年金)でも同じ問題があったのですが、いざ始めてみようと思っても、選択肢が多すぎて、何に投資すれば良いのか分からなくなってしまうのです。すると、結果的に何も動けなくなる……という罠にはまってしまいます。