コロナ禍のリモートワークなど生活スタイルの変化により注目されたのが、資産形成に対する関心が高まったこと。特に、20~30代の若い人たちの間で、つみたてNISAの口座開設が急増した。そんな状況の中、つみたてNISA本の決定版ともいえる『最新版 つみたてNISAはこの9本から選びなさい』(中野晴啓著、ダイヤモンド社)が3月16日に刊行される。本連載では、つみたてNISAを利用して長期投資や資産形成をしてみたいという人に向けて、失敗しないつみたてNISAの賢い選び方・買い方について、同書から抜粋して公開する。「つみたてNISAってなに?」という投資ビギナーの人でも大丈夫。基本的なところからわかりやすくお伝えしていくので、ぜひ、お付き合いください。

日本の投資信託には、個人の資産形成に貢献できる商品が少ないPhoto: Adobe Stock

日本の投資信託業界が引きずっている悪いイメージ

 日本では「危ない」「難しそう」「ふつうの人はできない」といった負のイメージがつきまといがちな投資信託ですが、投資の先進国である米国で、個人が資産形成をするのに欠かせないのが、投資信託を用いた長期投資です。

 たとえば1934年に設定された「アメリカン・ファンズ・インベストメント・カンパニー・オブ・アメリカ」(ICAファンド)という株式ファンドがあります。設定以来、戦争や不況、金融危機などを乗り越え、なんと87年を経て平均利回り(複利)は12・04%(2020年12月末現在)。毎月1万円ずつ積み立てを続けているだけで、現在は約334億円になっています。

 この投資信託は、今も純資産総額が11兆円を超えるメガファンドです。これこそ、長期投資の王道だと思いませんか?

 対して日本の投資信託は、なかなか個人の資産形成に貢献できる商品は少ないというのが、私の正直な感想です。

 実際、日本の投資信託は過去において、販売金融機関の手数料稼ぎの道具として、もっぱら短期間に回転売買(投資家に何度も売買させること)されてきたという歴史があります。

 「投資信託ではまともな資産形成ができない」と考える人が多いのは、こうした過去の悪いイメージが今も根強く残っているからです。

 つみたてNISAは、こうした今までの投資信託のイメージに一石を投じる制度といってもいいでしょう。

 詳しくはのちほど説明しますが、つみたてNISAに先んじること4年前から始まった一般NISAとは違い、つみたてNISAで買い付けられるのは投資信託、それも金融庁が「長期の資産形成にふさわしい」と考える投資信託のみに限定されているからです。

 株式はもちろんのこと、投資信託でも短期売買向きと思われるものは、つみたてNISAの対象になれません。

 それだけ金融庁はつみたてNISAを、長期的な個人の資産形成に寄与できる制度に育てていきたいと考えているのです。