日本政治の碩学ジェラルド・L・カーティス教授は、今回の総選挙の結果をどう見ているのか。自民党大勝の要因から、民主党政権の評価、政治の右傾化傾向、なぜ選挙ごとに結果が大きくスイングするのかまで、縦横に語ってもらった。(聞き手/コラムニスト 遠藤典子)
米コロンビア大学政治学部教授。政治学博士(コロンビア大学・1968年)。専門は日本の政治外交、比較政治学、日米関係、米国のアジア政策。近著に『政治と秋刀魚?日本と暮らして四五年』(日経BP、2008年)。
――衆議員選挙の結果をどう見るか。
有権者が民主党に対して厳しい審判を下した、という一言に尽きる。3年4ヵ月間政権を握り、3人の首相を輩出したが、マニフェストに書いたことを実現せず、書かなかったことを実現した。この政党の理念はどこにあるか、政権運営能力などないのではないか、という思いが有権者の気分を支配していたのであろう。
民主党に入れたくない有権者の票の受け皿になるのは、政権担当能力のある自民党しかなかった。自民党の獲得票数は過去の選挙のそれを下回り、自民党支持が広がったわけではないが、小選挙区においては、前回の選挙に破れ、次のために選挙区を丹念に回っていた自民党候補者が強かった。比例で自民党に行かなかった票は、日本維新の会へ流れた。
民主党政権下の日米関係は
決して悪くはなかった
――民主党への逆風をどう捉えるか。
有権者の民主党批判は、行き過ぎのように思う。東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故において、菅直人首相の対応が非難されたが、ほかの誰が総理であったなら、もっとうまく対処できたというのだろうか。ハリケーン、カトリーナやサンディに対する米政府の対応に比べても、決してまずくなかった。