1日に何十回も手を洗うよう命令される…強迫症を抱える子に振り回される家族の苦悩写真はイメージです Photo:PIXTA

こだわりや不安が強すぎて日常生活に支障をきたす強迫症は、家族をも巻き込む病である。我が子の不安を少しでも和らげたいと、何度も手洗いに付き合い、言われるがままに学校を休ませる……。その善意が症状を悪化させ、ひいては家族全体を疲弊させていく。強迫症を40年診てきた医師が、家族が取るべき距離感と支援の方法を教える。※本稿は、精神科医の原井宏明、精神保険福祉士の松浦文香『強迫症とうまくつきあう』(さくら舎)の一部を抜粋・編集したものです。

強迫症の子が生まれるのは
遺伝か環境か?

 強迫症(編集部注/強い不安やこだわりによって、日常生活に支障をきたす病)は遺伝負因(血縁者は発症する確率が高くなること)があるため、たいていは家族にも強迫傾向を持つ人がいます。これを架空の家族を使って説明しましょう。

 私の経験ですが、強迫症の人が結婚する場合、相手には自分とは異なる性格の人を選ぶことが多いです。確認強迫(編集部注/鍵やガスの元栓を閉めたか不安になり、何度も確認を繰り返す病)に悩んでいる男性が、忘れ物の天才と呼ばれるほど確認しないおおらかな女性と結婚するようなものです。

「破れ鍋に綴じ蓋」のたとえが合うかもしれません。

 その子どもは両親のそれぞれのDNAを受け継ぎます。父親似の子どもは強迫傾向を、母親似は非強迫傾向を受け継ぎます。

 子どもが3人(長男、長女、次男)いて、そのうちの2人(長男、次男)が父親に似て強迫の種となる遺伝子を持っていたとします。もちろん強迫の遺伝子を持っているすべての人が発症するわけではありません。強迫の芽を育てる環境が必要です。

 強迫傾向のあるこの一家で想定される強迫ストーリーを考えてみましょう。