偽物のロレックス Photo:picture alliance/Gettyimages
ロレックスなどのスイス製の高級腕時計は、古くから「コピー品作成」の標的となってきた。昨今はその手口が洗練され、「外側は本物、中身は偽物」「目立つ部品だけ本物」といった“合わせ技”が使われるようになった。目の肥えた時計ファンすら騙される「スーパーコピー」は、いったい誰が何のために製造しているのか。(時計ジャーナリスト 渋谷ヤスヒト)
「スーパーコピー」に「N級品」
進化するニセモノ高級腕時計
今では信じられないことだが、1980~90年代にかけて、世界各国の観光地やマーケットでは高級腕時計の「偽物」が公然と売られていた。
日本でも有名時計ブランドの人気モデルを模した商品が大手ディスカウントストアなどで流通し、「パチモノ」と呼ばれて目玉商品となっていた。
コピーの対象となっていたのは、主にロレックスなどのスイス製の高級腕時計である。スイス時計協会(FH)が公表した推計によると、一時は偽物時計の年間製造量(年間4000万本超)が本物のスイス製時計の年間輸出量(約2600万本)を上回っており、世界的に流通が拡大していた。
こうした事態を受け、FHとスイス高級時計財団(FHH)は2009年に「Fake Watches are for Fake People(偽物時計は、偽物の人間が持つもの)」というスローガンを掲げ、世界的な偽造品反対キャンペーンを展開した。
その結果、「高級腕時計の偽物」はディスカウントストアなどから姿を消したかに見えた。
しかし、その後、「偽物問題」はより一層深刻になった。偽物時計がインターネット上でおおっぴらに流通し、より簡単に入手できるようになったのだ。
Googleで「スーパーコピー」と検索した結果(URL等が判別できないよう加工しています)拡大画像表示
そのうえ技術も進化し、現代の偽物はパッと見ただけなら本物そっくりに仕上がっている。時計のプロが手に取っても、すぐには真贋を判別できないほど精巧なコピー品も出てきている。
「UNIFAB」による報告書
精巧な偽物は、日本市場では「スーパーコピー」「N級品」などと呼ばれている。これらのキーワードで検索すると、偽物販売業者のサイトがズラリと並ぶ。そのドメインや企業の所在地を調べると、日本ではなく海外であることが多い。
また、フランスの模倣品対策団体「UNIFAB」が2025年6月に発行した報告書によれば、現在流通しているコピー品の中には、本物と偽物の部品を組み合わせた「ハイブリッド型」が含まれているという。
具体的には、「外装は正規品だが、内部のムーブメントには偽造品が使われている」「部品の大半は偽物だが、目立つ箇所のみに本物が使われている」といった具合だ。
いったい誰が、どんな目的で、スーパーコピーを製造しているのか――。







