菅義偉前首相の独占インタビューを全4回にわたってお届けする。今回のテーマは、官房長官として支えた第2次安倍政権と、自身が率いた菅政権の経済政策だ。菅政権で掲げた4大成長戦略の中には、Twitterで「20万いいね」もの反響を集めたものもあったという。GPIF改革やTPP協定交渉、ふるさと納税、少子化対策といった政策の遂行の裏側を本人に語ってもらう。(イトモス研究所所長 小倉健一)
財務省からの指摘をはねのけて
官房長官として言い続けたこととは?
――岸田文雄首相が政権を担ってすぐに、自身の発言に端を発して「岸田ショック」と呼ばれる株価の暴落が起きました。分配を優先し、株式市場を軽視する姿勢に、市場関係者からの評判は最悪です。そこで、安倍政権での官房長官時代、そして総理就任後の経済運営について聞きます。安倍・菅両政権において株価や経済成長はどの程度重視していたのでしょうか。
当然、最重要課題でした。第2次安倍政権が発足したとき、株価は1万円前後、為替は1ドル80円台をウロウロしていました。これでは、日本企業に成長を求めることなど難しいですね。
私は安倍晋三元首相が打ち出したアベノミクスの「3本の矢」、つまり金融緩和、財政出動、成長戦略は、絶対的に正しかったと思っています。あらゆる政策を総動員して経済対策を行った結果として、株価は堅調に推移し、為替の水準も是正することができました。
私は、官房長官として会見を毎日行っていました。その当時、円高から円安に変わっていったことを記者から問われ、「過度の円高の是正」だと繰り返し述べていた。すると、財務省から「輸出輸入のバランスを考えたら、もうこれぐらいがちょうどいい。これ以上、記者会見で『過度の円高の是正』とは言わないでください」と指摘が入ったこともありました。
私は為替も金利も株価も、ずっと注視してきました。まだまだ円高の是正は足りないと考えていたので、財務省の指摘をはねのけて、「過度の円高の是正」だと言い続けていました(笑)。「日本政府は円高是正に取り組む」ということを、メディアを通じて発信していったわけです。
安倍首相からも「それは当然だ」という了解を得た上での発言でした。