部下は否定されすぎると従順になる

──わびさんは、月200時間以上の残業や、上司からの理不尽な指導などを受けていたにもかかわらず、職場で倒れるまで1年半もの間、同じ環境で仕事を続けていました。「辞めよう」「この上司はおかしいかもしれない」と思ったことはありませんでしたか。

わび:不思議なことに、人って否定されまくると従順になるんですよ。一種の洗脳状態になってしまっていたんでしょうね。

 立場が上の人に「お前が悪い」と言われ続けると、相手が正しくて自分が間違っていると思い込むようになるんです。

 だからこそますます、「仕事ができない自分に対して指導してもらえてありがたい」と、相手の言葉を信じるようになってしまう。

パワハラされやすい人の2つの特徴Photo: Adobe Stock

──恐ろしいですね。わびさんは具体的には、どんな言葉を投げかけられていたのでしょうか。

わび:私の場合は、とにかく毎日のように「否定の言葉」をぶつけられていました。

 最初は仕事のやり方についてだけだったのが、徐々に、プライベートな出来事についてまで否定されるようになって。

 お弁当の中身や、家族や、子どもの名前にまで文句をつけられて。

──お子さんのお名前にまで? たとえば、どんな?

わび:「変な名前やな」とか、あとは、「お前なんかと結婚した嫁さん、可哀想やな」みたいなことも言われましたね。

──客観的にはどう考えてもその上司がおかしいとしか思えませんが、当時はなかなかそうは思えなかったんですよね。

わび:これが不思議なもので、否定されまくればされまくるほど私は従順になって、きちんと職場に行っていました。

 どんどん思考がおかしくなっていき、しまいには「どの種類の缶コーヒーを飲むか」すら、決められなくなったくらいです。

「このコーヒーにしたら怒られるんじゃ?」と考えてしまって、自分で決断できない。

「全部、仕事ができない自分が悪いんだ」「迷惑をかけないようにしなくちゃ」と追い込まれて、休むなんてとても考えられませんでした。