庶民の食卓は、相次ぐ食品値上げにおびやかされている。4月以降も食用油やチーズ、カップ麺や袋麺の値上げが控えている。しかし、これらはロシアのウクライナ侵攻が大きく影を落とす前から決まっていたであろう値上げだ。問題は今年後半で、戦禍の影響でますますモノの値段が上がる可能性がある。我々の生活はどうなるか解説する。(消費経済ジャーナリスト 松崎のり子)
パンがないなら、お菓子もない!小麦粉高騰は必至
農林水産省は4月からの輸入小麦の民間への売り渡し価格を発表したが、2021年10月期と比べて17.3%の引き上げになるという。
そもそも小麦価格は4月と10月に見直される。例えば、22年年頭から相次いだパンの値上げは、21年10月の引き上げを反映したもので、21年4月期と比べ19%アップした。つまり、小麦粉を材料とする加工食品の価格は、しばらくすると、今よりさらに上がる可能性があるわけだ。農水省は、食パンは1斤当たり約3円のアップと試算している。しかし、それはまだ序の口かもしれない。
小麦粉と聞いてピンとくる人は多いだろう。ロシアのウクライナ侵攻だ。
なんといっても、ロシアとウクライナは小麦の輸出大国であり、合計すると世界の輸出量の3割を占めているとのことだ。日本はロシア産小麦の輸入国ではないが、安心している場合ではない。戦闘が長引けば小麦の供給不安から、それ以外の地域の小麦の取引価格が高騰することは容易に想像がつく。4月の売り渡し価格の見直しにもウクライナ情勢の影響が出始めているが、本格化するのはこれからだ。10月の数字を見るのが恐ろしい。
日本は小麦の9割を外国から輸入している。政府が購入し、民間に売り渡された小麦は製粉業者によって小麦粉にした後、さまざまな食品に加工される。パン、うどん、中華麺、ギョーザの皮などの他、ケーキやカステラ・ビスケットなどの菓子類にもなる。つまり、「パンがないなら、お菓子を食べればいいじゃない」と言ったマリー・アントワネットは正しくないのだ(実際にはそんなこと言っていないらしいが)。
小麦粉が上がればパンもお菓子も上がる。事実、銀座コージーコーナーは4月から生菓子11品、焼菓子7品の値上げを発表した。今より5~10円ほど高くなってしまう。
そればかりか、「スーパーの食品が高いなら、外食すればいいじゃない」も通じなくなりそうだ。今後の見通しを考えるほど、暗い気持ちになるかもしれないが、家計を守るためにも備えておかなくてはならない。