――平尾さんが「別のやり方」に鍵があると気がついた最初の成功体験はなんですか?

平尾 気がついたというより、子どもの頃から人と違うやり方を考えるのが好きだったんですよね。母が学習塾の先生だったので、私も小さい頃から自宅学習をする習慣がついていて、算数のテストはいつも時間が余っていました。その時間に別解ばかり考えていました。

 周りが偏差値の高い大学を目指す進学校で、起業家になると決めて慶應SFCだけ受けたのも私だけでした。その選択からしてちょっと変わっていますよね。でも変わっているって、それだけでほかとは違う個性なんです。

 つまりちょっと変わっている個性で、ちょっと変わった打ち手と優れたやり方を考えるのが起業家思考とも言えますが、多くの人は正解を探そうとするんです。でもその正解主義をやめなければほかに差はつけられないことを、20年以上痛感してきました。

――別解に×をつけた先生に食い下がったり、大学生で起業した事業の継続を条件にしてリクルートに入社したり。前例をどんどん突き破っていく平尾さんの挑戦的なマインドも、正解主義の人に足りないように感じました。

平尾 ほかの人と違う考えや行動が、自分にとってハンディだと思ってないんですよね。むしろほかと違う個性やオリジナリティを重視したほうが、面白い仕事につながっていくので。ただ人と違う意見を言う場合、ある程度は仕事ができないと耳を傾けてもらえません。だから私は会社員時代も、仕事ができるようになるためにどうすればいいか徹底的に考えて、成果を出したうえで自分の意見を言ってきました。

 そういう意味で言うと、仕事ではまず「優れたやり方」を徹底して成功体験を積むことが大事です。「優れたやり方」ができない人がいきなり「別のやり方」をやろうとしても難しいですから。ただ、「優れたやり方」ばかりやっているとほかと差がつかなくなるので、「自分らしいやり方」と「別のやり方」を組み合わせていく。そういう順番で別解を探すといいと思います。

第2回へ続く

「正解がない時代」でも成果を出せる人たちの共通点、「別解力」とは?平尾 丈(ひらお・じょう)
株式会社じげん代表取締役社長執行役員 CEO
1982年生まれ。2005年慶應義塾大学環境情報学部卒業。東京都中小企業振興公社主催、学生起業家選手権で優秀賞受賞。大学在学中に2社を創業し、1社を経営したまま、2005年リクルート入社。新人として参加した新規事業コンテストNew RINGで複数入賞。インターネットマーケティング局にて、New Value Creationを受賞。
2006年じげんの前身となる企業を設立し、23歳で取締役となる。25歳で代表取締役社長に就任、27歳でMBOを経て独立。2013年30歳で東証マザーズ上場、2018年には35歳で東証一部へ市場変更。創業以来、12期連続で増収増益を達成。2021年3月期の連結売上高は125億円、従業員数は700名を超える。
2011年孫正義後継者選定プログラム:ソフトバンクアカデミア外部1期生に抜擢。2011年より9年連続で「日本テクノロジーFast50」にランキング(国内最多)。2012年より8年連続で日本における「働きがいのある会社」(Great Place to Work Institute Japan)にランキング。2013年「EY Entrepreneur Of the Year 2013 Japan」チャレンジングスピリット部門大賞受賞。2014年AERA「日本を突破する100人」に選出。2018年より2年連続で「Forbes Asia's 200 Best Under A Billion」に選出。
単著として『起業家の思考法 「別解力」で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法』が初の著書。
「正解がない時代」でも成果を出せる人たちの共通点、「別解力」とは?