「自分らしく」「優れた」「別の」やり方の組み合わせで別解を出す

――そういう話は私もよく聞きます。けれども、子どもの頃から暗記型の詰め込み教育を受けて正解を求めることに慣れてしまっている人が、急に自分の頭で考えようと思ってもどうすればいいのかわからないと思うんです。平尾さんの本には、その「何からやればいいか」が書かれていますね。

平尾 起業家の思考法は、「発見力」「別解力」「実現力」「失敗力」「成長力」の5つの思考法で成り立っています。その中でも本書で特に強調して伝えているのは「別解力」です。この「別解力」は、「自分らしいやり方」、「優れたやり方」、「別のやり方」の3つで構成されています。

平尾 「自分らしいやり方」は、自分の好きなことや得意なこと、自分ならではの経験や価値観を生かしたやり方です。でも、自分と同じ強みや好きなことがある人はたくさんいるので、そう簡単には勝てません。

「優れたやり方」は、早い、安い、大きい、多いなど大企業が得意とすること。既存の「正解」とされてきたビジネスです。世の中に良いものとして受け入れられすい優等生的なやり方です。でもこれは、参入障壁が低いのでほかに替えがききますし、陳腐化しやすいデメリットがあります。

 そこでこの2つに「別のやり方」を組み合わせる必要があるのです。わかりやすく言うと、新しくて、誰もやっていないやり方。私がビジネスに関わった20年で、3つのやり方のうちもっとも評価されたのも「別のやり方」です。

 1つだけ、もしくは2つの組み合わせだけではなかなかうまくいきません。起業家マインドには3つを組み合わせた「別解力」が不可欠です。優秀な起業家の共通点を考えたときも、別解力が高い人だと気がつきました。

――「好きなことを仕事にしよう」という風潮が強まっているので、「自分らしいやり方」に、フォロワー数を増やすなどの「優れたやり方」の2つを組み合わせる人は増えています。でもそれだけじゃ弱いんですね。

平尾 「自分らしいやり方」と「優れたやり方」だけでは、ほかがすぐ参入できるのでコモディティ化してしまうんですね。まだ「優れたやり方」と「別のやり方」の2つのほうが二律背反の組み合わせなので真似されにくい。これが実現できれば、打ち手としてはかなり高い水準に達します。ただ、自分の価値観や夢中になれる要素がないので、モチベーションを維持できなくて長続きしないケースが多いです

 では「自分らしいやり方」と「別のやり方」の組み合わせはどうか。これはいかにも独創的なアイデアに見えますが、広く受け入れられなければ独りよがりの自己満足で終わります。失敗するケースが多くみられるのもこのパターンです。

「正解がない時代」でも成果を出せる人たちの共通点、「別解力」とは?