コロナ禍で「巣ごもり投資」「ポイ活投資」などが人気を集め、円安・株高下、空前の投資ブームか!?と言われたのも束の間。ウクライナ情勢による不透明感が世界の株式市場を覆っている。こうした状況下で上場株式を相続したら、どうすればいいのか。相続税専門の税理士として、まずは基礎知識から解説したいと思う。(税理士、岡野雄志税理士事務所所長 岡野雄志)
親の投資株を相続したら
まず何をすべき?
亡くなった父親が、生前、「老後資金の足しになればと、株をやっているんだ」などと言っていたとしよう。さて、父親が投資していた株式とは、いかなるものだろうか。
株式を取引形態で分類すると、「上場株式」と「非上場(未公開)株式」になる。「非上場(未公開)株式」は名前の通り、証券取引所の市場に上場・公開されておらず、一般投資家が自由に取引はできない。証券会社に口座開設し投資していたなら、十中八九「上場株式」だろう。
亡くなった方が遺言書や資産目録などを残していれば良いが、そうでない場合、相続人は「宝探し」のごとく遺産探索に苦労する。特に昨今、株式投資もネット取引が増え、株券や証券がないことが多い。まず、証券会社からの郵便物、PC・スマホの取引履歴をチェックすべし。
それでもわからない場合、ほかにも不明な証券口座が存在する可能性がある場合は、証券保管振替機構(ほふり)へ「登録済加入者情報の開示請求」をするという方法がある。上場株式であれば、その口座の開設先を確認できる制度だ。利用できる条件は以下の通り。
【開示請求できる人】
●本人
●本人の法定代理人(親権者、成年後見人等)
●本人の任意代理人(本人から委任を受けた代理人)
●法定相続人(複数人いる場合はそのうち1人)
●法定相続人の法定代理人(親権者、成年後見人等)
●法定相続人の任意代理人(法定相続人から委任を受けた代理人)
●遺言執行者
【開示請求に必要な書類】
●開示請求書(証券保管振替機構のサイトからダウンロード)
●本人確認書類(運転免許証、パスポート、マイナンバーカード等のコピー、または発行から6カ月以内の住民票や印鑑登録証明書等の原本、法人の場合は発行から6カ月以内の登記事項証明書または印鑑登録証明書の原本)
●法定代理人は法定代理権があることを確認するための書類
●任意代理人は委任状、発行から6カ月以内の印鑑登録証明書の原本(法定相続人の任意代理人は法定相続人の印鑑登録証明書も)
●法定相続人は法定相続情報一覧図または相続人と被相続人の関係を示す戸籍謄本等の原本
●遺言執行者は遺言書の種別ごとに遺言書の原本またはコピー(「原本と相違ない」旨を記載の上、遺言執行者の実印を押印)、遺言書情報証明書
なお、開示請求・結果報告ともに郵送のみとなっている。開示費用は有償で、相続人等が被相続人の口座を調査する場合は1件6050円(税込)。
被相続人の上場株式が把握できたら、口座のある証券会社をはじめ、すべての金融機関から「残高証明書」を取得する。上場株式を含めた遺産総額がわからなければ、遺産分割もできないし、相続税額もいくらになるかわからないからだ。