絵画写真はイメージです Photo:PIXTA

コロナ禍でオークション市場が盛況という。ネット入札でハードルが下がったからか、ステイ・ホームでアートを愛でる時間が増えたからか……。絵画の落札最高額は約510億円のレオナルド・ダビンチ作とされる『サルバトール・ムンディ』だそうだ。では、こういった高額な美術品や骨董品を相続したら、税金はどうなるのだろう。(税理士、岡野雄志税理士事務所所長 岡野雄志)

スーパーリッチが
アートで相続税対策するワケ

 日本でもバブル経済時代、安田火災がゴッホの『ひまわり』を約53億円で落札。最近では、前澤友作氏が約123億円で落札したバスキアの『Untitled』が話題を集めた。それにしても、なぜ世界の超富裕層はこぞって高額アートを購入するのだろう?

 富裕層にとって安定的な資産形成のポートフォリオ理論といえば、「現金」「土地(不動産)」「株」への分散投資が基本中の基本。近年、そこに「アート」も加わったという。前文で述べたオークション市場の活況とアート価格高騰が無関係とはいえないだろう。

 もちろん、投資である以上、値上がりを期待する。中には、作家やアート界支援が目的のパトロンや篤志家もいるだろう。だが、『サルバトール・ムンディ』のように話題を呼んで高値となれば、転売が繰り返され、ついには所有者不明となるケースもある。

 文化的視点に立てば、こうした事態は貴重な財産の喪失となってしまう。そこで、文化財の国外流出を防ぐため、各国で税制優遇などの措置が取られている。

 例えば、米国では5000ドル超の価値の美術品を1年以上保有し、非課税団体に寄付すると、市場価格により計算された所得税が所得から全額控除される。故人の場合も、遺産税対象の遺産総額から控除となる。

 日本でも、「美術品の美術館における公開の促進に関する法律」と「登録美術品登録基準」が1998年に施行されている。相続発生の際、国の重要文化財や国宝に指定の作品、世界的・歴史的に見ても文化的価値の高い作品などの登録美術品は、国債や不動産などと同様、物納が可能となった。物納できるとなれば、相続税対策にもなる。

 それでは、文化財とはいかないまでも、市場価値の高い趣味のコレクションやブランド品はどうだろう?相続したら、税金は課せられるのだろうか。