包装資材の製造技術を応用した医療用ガウンでグッドデザイン金賞受賞

素早く着脱できて、廃棄も簡単――コロナ禍で医療現場の作業負荷や二次感染リスクが懸念される中、シンプルな設計ながら高機能な長袖プラスチックガウン、その名も「イージー脱着ガウン」が注目を集めている。(取材・文/大沢玲子)

 生み出したのは包装資材製造販売のミヤゲン。同社は1953年、紙袋の製造加工からスタートし、ポリ袋メーカーとして成長。主力のレジ袋やゴミ袋をはじめ、産業資材など広範囲な包装事業を手がけ、安定的な成長を遂げてきた。

包装資材の製造技術を応用した医療用ガウンでグッドデザイン金賞受賞代表取締役社長・宮元武利氏

 一方で、参入障壁が高くない業界にあって、「価格競争や海外生産拠点での人件費高騰、サプライチェーンの問題など、さまざまな課題が顕在化するようになりました」。3代目として2016年より社長を務める宮元武利氏は、そう明かす。

 環境への配慮が迫られる中、社会的課題にも貢献するような自社開発製品が必要である??。そんな危機感から、2代目の宮元武壽氏(現会長)が力を入れていた技術開発分野を成長戦略の一つに据え、知的財産を軸とした新たな事業を模索していくことになる。

特許など知的財産を軸に
自社製品開発に取り組む

包装資材の製造技術を応用した医療用ガウンでグッドデザイン金賞受賞コンビニのドリップコーヒーなどのカップ容器を自立して運べる「キャリーカップ」。環境負荷軽減のため、植物由来の原料を配合した製品も提供

 その第1弾の商品が16年にリリースした、テークアウト用カップ入り食品レジ袋「キャリーカップ」だ。コンビニエンスストアなどでブームとなったドリップコーヒーを運ぶ際、紙製のカップホルダーをセットしているのを目にし、「レジ袋だけで安定的に運べれば、作業の手間もゴミも減らせる。そう発想したのが開発の起点となりました」(宮元氏)。

 試行錯誤を経て、フィルム1枚で作った袋の左右下に特殊な熱溶着シールを加工。カップを袋にギュッと入れると、形状に合わせて必要な部分だけ剥がれ、カップが袋にフィットするアイデアを生み出す。「ワンマテリアル・ワンピース(一つの素材で1枚)で、シンプルに仕上げることにこだわりました」と宮元氏。

 シンプルで環境に優しい商品コンセプトが評価され、16年のグッドデザイン賞において「ものづくり特別賞」を受賞。17年には国内特許、19年には障壁が高い米国特許も取得するに至る。