経済の実力低下によって、わが国が円安の負の影響を吸収することが難しくなった。悪い円安の具体例として、エネルギーや食料品への家計支出が増える一方、余暇への支出は減る。コスト増加によって業績予想を下方修正する企業も出始めた。(法政大学大学院教授 真壁昭夫)
個人消費にはより強い下押し圧力
「家計防衛」する人は増える
わが国で、電力料金や食料品など多くのモノやサービスの価格上昇が鮮明化している。背景には、わが国経済の実力が低下していることがある。わが国経済の実力低下を反映して、外国為替市場では円安が加速している。通貨の実力=為替レートは、当該国の代表として「国力」を表しているともいえる。わが国の実力が低下すれば、円の価値が低下傾向になることは当然のことといえるかもしれない。
また、ウクライナ危機によるエネルギーや希少金属、木材、小麦などの価格上昇も重要な要素だ。輸入物価が押し上げられ、本邦企業の事業運営や家計に無視できない負の影響が及び始めた。貿易収支は赤字に陥り、一部の品目では、本邦企業が海外企業に「買い負ける」事態が発生している。円の下落が経済成長に負の影響を与える、「悪い円安」が鮮明になっている。
当面、内外の金利差拡大を背景に円安圧力は高まる。資源価格も上昇しやすい状況が続く。輸入物価はさらに上昇し、個人消費にはより強い下押し圧力がかかる可能性が高い。日常生活に不可欠なモノやサービスの価格上昇によって、生活水準を見直すなど「家計防衛」を余儀なくされる人は増えるだろう。悪い円安を克服するために、経済の実力向上に向けた構造改革が急務だ。