卒婚後、同居し続ける夫婦もいれば、別居する夫婦もある。同居の場合は、相手をただの同居人として扱うことになり、パートナーの行動に口出しをしたり、甘えたりすることもなくなるという。家計も、妻が扶養に入ったまま、夫と妻それぞれが経済的に自立するなど、夫婦によって事情は異なる。

「パートナー以外との性交渉を許すかも、夫婦それぞれの判断によります。世間的には、結婚したまま他の人と性交渉すると不倫だと断罪されがちですが、法的には、既婚者がパートナー以外と性的関係を持っても、刑法違反ではありません。もちろん、私的な裁判は起こりえますが、そもそも“相手に干渉しない”卒婚では、お互いが納得ずくなら問題ナシというケースが珍しくありません」

「夫が風俗に行くのが浮気に当たるか」については、夫婦によって見解が異なるだろう。それと同じく、卒婚時にパートナー以外との性交渉を許すかどうかも、夫婦によって異なるようだ。

「なかには、離婚の一つ前の段階として、卒婚を選択される夫婦もいます。たとえば、一度別居して物理的な距離が離れたものの、互いの関係が改善されなかった夫婦が、精神的に距離を置く“卒婚”を選択する。こうして、夫婦が互いの関わり方を見つめ直す機会になるのが卒婚なのです」

卒婚に踏み切るのは
50代夫婦が最も多い

 どのような理由で、卒婚に踏み切るケースが多いのだろうか。

「卒婚願望を持つのは、子どもが独り立ちした50代が最も多く、実行しているのもその年代がほとんどです。数十年連れ添うと、パートナーに家族としての情はあっても、性的魅力を感じられなくなるのは仕方ないこと。これが卒婚の理由となる事例が多いです」

 さらに、卒婚願望を持つ人の考え方には男女差がある、とあいこ氏は続ける。

「女性の場合、デートで褒められるなどして、精神的な承認欲求を満たしたい人が多いです。結婚後、性的対象として見られる機会が減ったことで、『独身時代のようにもう一度ドキドキしたい』という願いがあります。一方、男性は、『妻に文句を言われずに遊びたい』と、自分の性的欲求のために卒婚を選ぶ傾向です。特に妻に本当の性癖を伝えられない男性が多いです」

 ほかにも、「相手が不倫した」「もう一度自分の人生を充実させたい」など、夫婦が卒婚を選ぶ背景はさまざま。いずれの事情にも共通するのは、「今のままではお互いが満たされない」という現実だ。

「一度卒婚を試すと、それぞれの生活に潤いが生まれ、ずっと卒婚のままでいいと考える人は多いです」