北京冬季五輪の閉会式は、オリンピックの歴史上最も暗い章の一つに終止符を打つはずだった。独裁政治国での開催や新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による延期、核開発を巡る政治的駆け引きなどに直面する一方で、大会への世界的な関心は過去最低水準にまで低下していた。したがって、バトンが北京から2024年夏季五輪を開催するパリに引き継がれた際、主催者は安堵(あんど)のため息をついた。向こう10年はパリ、ミラノ、ロサンゼルスといった自由民主主義国の魅力的な都市で開催されるほか、コロナの収束や視聴率の大幅回復が見込まれることから、大会に大きな期待が寄せられていた。「これによって新たなページが開かれる可能性があり、われわれはそれに貢献することを楽しみにしている」。五輪のカヌー競技で3度金メダルを獲得し、現在は2024年パリ五輪の組織委員会会長を務めるトニー・エスタンゲ氏はこう述べた。「地平線には、とても明るい兆しが見える」