【ブラチスラバ(スロバキア)】ユリア・ピセツカさん(53)は10年前、1歳の赤ちゃんを腕に抱えて、シリアの戦場から母国ウクライナに逃れてきた。その後再び彼女の周囲に戦火が及んできた。ロシア軍が迫り、近くの原発も戦闘で危険な状態になったため、11歳になっていた息子を再び避難させる時が来たと判断した。  問題はその方法だった。認知症を患う年老いた母を残して脱出するわけにはいかない。他の3人の子ども(全員10代)は既に、20歳のもう1人の息子が留学しているスロバキアに避難していた。ピセツカさんに残された選択肢はただ一つ。