インターネット検索エンジンの競争は、もう何年も前に終焉したと信じていた人は多いだろう。最強グーグルの検索市場シェアは60%以上と不動の地位を占め、2位のヤフーが足を引きずりながら、そのずっと後を20%ほどのシェアで追う。残りを分けるのは、種々雑多な「その他」のサービス。こんな市場にこれから乗り込もうとするプレーヤーがいたら、とりあえず無謀と言われても仕方ないだろう。
ところが、この期に及んで、グーグルに挑戦を仕掛けようと浮上してきたプレーヤーがいる。他でもない、マイクロソフトだ。検索市場でのシェアが9%にも満たない同社は、新しい検索サイト「Bing」を立ち上げ、「その他」群からいきなり名乗りを上げたのだ。
マイクロソフトと言えば、昨年ヤフーの買収を仕掛け、全社買収がならない場合はヤフーの検索サービスだけでも買い上げてシェアを伸ばし、オンライン広告収入の間口を広げようと必死になっていた。買収話は蒸発したが、ヤフーの経営陣刷新が完了したところで、再び乗り出してくるのではないかといううわさも出ていた矢先のことだ。
さらに驚いたことに、Bingは検索とは言え、これまでのものとはすっかり異なるタイプのサイトで、市場撹乱を狙ったような明らかな変化球。それが、6月初頭にサイトを立ち上げた後2週間足らずで、市場シェアを2%伸ばすという快挙を遂げたのだ。
では、Bingとはどんな検索サイトか。
マイクロソフトでは、Bingを検索エンジンではなく「意思決定エンジン」と呼んでいる。今や4.5秒ごとに新しいサイトが生まれている中で、人々はこれでもかと多数のリンクを手にするが、一向に作業ははかどらない。目的に素早く辿り着けるようにすることで、そんな情報洪水の弊害から身を守るためのサービスがBingだというのだ。
まず、Bingのトップページにアッと驚くだろう。スイスの山岳風景や色鮮やかな民族衣装を身につけた人々が写った写真が、スクリーン全体を覆うほどの大きさで登場する。スクリーンセイバーとしても十分通用するこの美しさは、これまでのマイクロソフトの流儀にはなかったものだ。