WSJのスクープ「上海最大の高齢者施設でクラスター発生」

 4月1日付けの米「ウォール・ストリート・ジャーナル」(WSJ)が、浦東地区にあり、入院者数1000人を超える上海最大の高齢者施設「上海市東海老年護理医院」(以下、東海老人ケア病院)で「大量の感染者と死者が出ているようだ」と伝えたのである。記事は、職員が感染し隔離されて人手が足りなくなったため、急きょ雇用された新職員らが「病院前に6台の霊柩車が止まっているのを見た」と証言したと紹介している。

 また記者は、ここに入院していた父親が亡くなったとつぶやくSNSの書き込みを紹介。書き込んだ息子の友人や、その他病院訪問者も十数人分の遺体を目にしたと伝えている。

上海市の発表内容では、重症者や死者の情報が分からない

 ここでもう一度、前述の報告フォーマットを見直してみると、新規感染者数は事細かく述べられている一方で、重症者や軽症者の数、さらには死者については一切触れられていないことが分かる。つまりこれらの感染者の影でどれだけの人たちが深刻な状態にあるのか、亡くなった人たちは何人いるのかは「隠されて」いるのである。前述の記事に基づいて、発表された新規感染者の住所を照らし合わせてみると、同病院の住所が確認できた。

 さらにWSJはその後続けて、東海老人ケア病院に続き、上海第二の規模を持つ養老病院でも、患者と職員の一部が院内施設に隔離されていることを暴露した。

 中国の経済メディア「財新網」も2日、東海老人ケア病院について写真付きの記事を発表した。それによると、同病院は3月12日未明に突然封鎖され、新規患者の受け入れをストップ。一方でその時点で院内にいた入院患者1200人あまりと付添の家族及び職員らが閉じ込められたと、その後PCR検査を経て「解放された」家族の声を伝えている。

 しかし、病院内ではその後も陽性患者が発見され、院内は混乱。4月1日の時点では3月25日を最後に院内でPCR検査は行われず、約100人の患者と家族が隔離状態に置かれ、わずか3人の看護師が食事や薬を運び、環境の消毒を行っているという、劣悪な環境にあるとした。