中国で新型コロナウイルス感染が急拡大している。世界の耳目はロシアのウクライナ侵攻に注がれているが、中国ではこの間、全国的なオミクロン株の感染で大混乱に陥っていた。吉林省省都の長春市はロックダウンされ、吉林市では集団感染の対応を怠ったとして市長が更迭された。また、上海市では小区(居住区)ごとに封鎖が行われている。厳格な検査と感染者の隔離を徹底してきた中国に「ゼロコロナ」の限界が見え始めた。(ジャーナリスト 姫田小夏)
2020年の悪夢再燃、中国政府も路線変更
3月15日、中国国家衛生健康委員会は14日に報告を受けた中国本土の新たな市中感染者は3507人(無症状感染者は1647人)だと発表した。
今回の感染拡大では、吉林省が最悪の状況に陥っている。14日の吉林省の新たな感染者数は3076人で、全体の約9割近くを占めた。その内訳は、吉林市2601人、長春市460人と、吉林市の数字が突出する。
現地のニュースは吉林市内の大学で集団感染が発生したと伝えている。また、医療体制の不十分さも感染拡大を招いたようだ。感染防止への対応を怠ったことを理由に、吉林市長が更迭された。東京在住の吉林省出身者Yさんは「2020年の悪夢が戻ってきた。この数字はあまりにひどすぎる」と訴える。
新規感染者3507人というのは衝撃的な数字だ。同じ14日の東京都内の新規感染者数4836人(無症状感染者を含む)に比べれば、中国の数字は1000人以上下回るが、「ゼロコロナ」を一歩たりとも譲らず、徹底的に感染を封じ込めてきた“世界の優等生”からすれば一大事である。
その中国で今、これまで全力で遂行してきた「ゼロコロナ」政策が、変化の兆しを示し始めている。